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即興小説掲示板 即興小説で切磋琢磨するための掲示板です。書き込みパスは1234です。
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≫ ルール
By お初の方へ
2006-12-17 12:52:38
出されたお題みっつを使用して即興で小説を書く掲示板です。

★ルール★
・前の投稿者が記したお題みっつを必ず使う(個人名は不可とする)。
・ジャンルは不問、文字は2000文字まで。
・18禁など制限あるものはナシ。
・お題が出されなかった場合は、前のお題がそのまま継続される。
・感想は各レスに。感想がいらないという方はちゃんと明記して。
・感想を書くときは初対面ではなくても丁寧に仲良く。
 では、どーぞ!
W41S
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≫ 激安ブランド直営店k-brandshop【宮崎 美嘉質屋】 專門商店
By 宮崎 美嘉
2011-06-18 09:42:53
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pc
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≫ 蓮根穴から抜けられぬ
By こじか
お題みっつ:蓮根 布 醤油 次のお題みっつ:記憶 君 名前
2010-01-27 15:34:36
茶渋ような奴だとはよく言われたものだった。だけど、生まれながらの乾物者なのだから仕方ない。全くもって周りの言う通りで、この性格は茶渋のようにこびりついて取れやしなかった。

しかし、またしてもその言葉を言われるとは。やはり私は根っからの乾物者のようで。



卯の上刻。なかなか起きないぬしさまを、やっとの思いで起こすともうそんな刻になってしまった。慌ただしく朝餉を用意した。おかずは煮物に味噌汁焼き魚にそれから和え物。空いた腹に食欲を刺激する香りに、(我ながら、なかなか…)と内心、自画自賛をする。

「お前さん、お前さん。この蓮根の煮物、とても美味だが落としてしまったよ」
ああ、着流しが汚れてしまった。と言って、目の前で帯を外していくぬしさまにため息をついた。ため息も付きたくなる。朝からお召し物を汚されるなんて、洗うのは一体誰だと思っているのやら。

「嫌ですよもう、ぬしさまは。布へ落ちた醤油の染みはなかなか頑固で落ちないのですよ」

「はは、そりゃお前さんそっくりじゃな……そんな顔は止めておくれよ」

ピシャッと箸を置き、ぬしさまを見つめて『何ですか』と言わんばかりの視線を送れば、直ぐ様折れたぬしさまに、内心(ふふん)と私は満足に笑う。私は一年の間に、ぬしさまを尻に敷くことに成功していた。
私はそれで満足だが、いくらぬしさまといえど、一応は男。自分が情けないのかため息をつかれた。

「…お前さんにゃあ敵わないよ。いくら何を言っても聞きやしないんだもの」

「あらどういう意味ですか?」

苦笑いのぬしさまに、三杯目の飯茶碗を渡しながら問えば、困ったような笑みがニタリとした笑みに変わった。

「頑固者、と言ったのさ」

まあ。どの口が言うのでしょうね。そんな私との暮らしも、満更ではないくせに。

ねぇだってぬしさま、その蓮根の煮物で一体何杯ご飯を召し上がるおつもりなんでしょうね。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐
皆さんの小説が素晴らしくて私も便乗してしまいました。
タイトルは、蓮根穴がヒロイン。はまって抜けられないぬしさまのこと(のつもりです)
P905iTV
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≫ 観察
By 枕
お題みっつ:他人、自分、無関心で書きました。 次のお題みっつ:蓮根、布、醤油でお願いします。
2008-12-19 20:29:42
 電車の座席に座って自分の足元だけを見つめるのは退屈なことだ。バッグに入れた文庫本に飽きると、私はよく同じ車両に乗る人間を観察する。
 赤の他人をあからさまに注視するのは体裁が悪いから、ぼんやりと車内を見渡すふりをする。路線図を見ています、という形でさりげなく人物を視界に引っ掛けるのも悪くない。
 無関心を装いつつ、視線の先の人間が何を持ち、何を着、何をしているのかを観察する。
 圧倒的に多いのは携帯をいじっている人間だが、携帯で何をしているのかはひとそれぞれ。メール一つとってもスーツの会社員なら仕事関係、私服の学生は友達以外にありえない。他には恥も知らずに堂々と通話をする人、流行りの携帯小説を読む人、イヤホンを繋げてゲームに興じる人。ボタンを押す指の必死さと、携帯を閉じる回数で何をしているのかは大体わかる。
他にもおしゃべりの激しいおばさん方、回りの見えない学生連中、大工姿の若い男、電車を足にしているほかに共通点は何もない人間が同じ空間に閉じこめられている。こんな面白い事が他にあるだろうか!
 他人に話せばそんな悪趣味なと眉をひそめられそうなことだが、良いことだって一つはある。
 調子の良くない足を車両に持ち上げる老婦人にいち早く気づき、私は言う。


「お席をどうぞ」
W62T
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≫ 束縛の声
By 揺蘭
お題みっつ:明かり、海、声 次のお題みっつ:他人、自分、無関心
2008-03-12 01:29:31
 手探りでつけた部屋の明かり。今日もつけた事を後悔する。
 リビングに横たわる、酔い潰れ、寝入った父。毎日の見るその光景に、嫌気はとっくにさしていて……。それでも俺は、父から逃げられなかった。

 俺を縛(いまし)めているのはとてつもなく単純な、頭に響く父の声。
 もう、何年前に言われたのかすらわからないくらい昔に、一度だけ、たった一度だけ、父は俺に「必要だ」と、言ってくれた。そのたった一言が、感情などさしてこもらぬその声が、俺を放してはくれなかった。

 疲れた俺は、誰に頼るでもなく、海へ行く。
 亡き母の好きだったこの海に。
 母は水平線から覗く、朝焼けが好きだとよく言った。
 俺も、それが好きだから、父(げんじつ)から逃げると、必ずここに辿り着く……ここ以外行く場所がないのもあるけれど。



 何時間経っただろうか……?朝の冷たい風が吹いた。俺はそれで目を覚ます。
 上体を起こせば、ズルッと何かが俺から落ちた。つまみ上げると、見覚えのあるジャケット。
 まだ冴えない目を凝らして、日の昇る、水平線の方を見る。

 そこには一つ、毎日見てきた大きな背中。
 見慣れたはずなのに、何故か見慣れない気がしたのは、背筋がピンと伸びていたからだろうか……?
 俺は立ち上がると、ゆったりとした足取りで、父の隣まで歩いた。

「就職先、決まった」

 俺を縛めるあの声で、父は俺の足並みに揃えるかのように、ゆっくりささやいた。


−−−−−−−−−

初めまして。
批評や感想を、是非戴きたいです。よろしくおねがいします。


W44K
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≫ 鈍色の交わり
By 煌輝
お題みっつ:「花、月、剣」でいただきました。 次のお題みっつ:「明かり・海・声」でお願いします。
2008-02-21 23:45:25
 寒明けの季節、時刻は酉。
 薄紅色の花弁が舞い散る丘で二人の男が対峙していた。共に若くはないが老いているようにも見えない。血気盛んな若者にも、長い年月を経て落ち着いた老人にも見えるのだ。
 男達はよく似ていた。黒い短髪の下の精悍な顔、今では日常で着ることが珍しくなった着物姿もそうであるが、何より身に纏う気が酷似している。強い覚悟が全身から滲み出ている。
「いざ」
 二人の内、幾分目尻が下がった男の声をかわぎりに緊迫が強まった。互いに腰の業物に手をかけ、抜き放つ。月光を浴びて煌めく二振りの鈍色。それを構える男達の顔までもが鋭さを増す。
 きっかけは一陣の風だった。一際強く吹いた風が花弁を巻き込み、竜巻のように渦を作った瞬間に二人が動いた。
 月が立会人の勝負は半刻ほど続いた。両者互角で決着は着かず、金属の打ち合う音の代わりに荒い息が場を支配した時。
「お父さん達、またやってるの!?」
「いい加減やめろよ。親父」
 走ってきた少女と少年が口々に言った。
「危ないから真剣で勝負はしないでって言ったでしょ!」
「いくら二人が師範だからってさ、心配するだろーが」
「第一、お父さん達が怪我したら道場はどうするつもりなのよ」
「せめて竹刀でやれよ。その剣、演舞用に許可取ってんだろ?」
 二人の男は顔を見合わせた。息子や娘に心配されるのは嬉しいが、と態度が言っている。
「わかってる。だが、お前達。いつも言ってるだろう? 侍や真剣は漢のロマンだ。どう言われようと止めるつもりはないぞ」
「そうだ。それに竹刀は毎日道場で使っているからな。たまには真剣を交えたくもなる。これが本当の真剣勝負、とか言ってみる」
 心底愉快そうに二人の男が笑う。少女と少年は呆れてはいるが、父親達があまりに楽しそうなので苦笑するしかなかった。

 季節は移り、寒入り。
 真白な立花の降る丘で二人の男が対峙していた。
 月を立会人にして、また鈍色を交えるのだろう。
911SH
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≫ It's all right.
By ミノル
お題みっつ:猿、ヒト、電車 で書かせていただきました。 次のお題みっつ:花、月、剣 でお願いします。
2008-02-13 02:41:03
「馬鹿なのよ。まだ、猿なの。進化過程。ヒトじゃあない、おサルさん」

鼻息も荒く、彼女はこう言い放った。

20分も待たされたのは僕の方だというのに、彼女はなぜか怒り心頭に発した様子で現れた。
理由を問えば、曰く、電車内で、それも優先席にどっかりと腰掛けて、堂々と携帯電話で話していた若者を見た。…らしい。

「あれはわかってない。世の中をわかってない。あんなの猿だよ、猿」

先程から熱を込めて、彼女はそう繰り返す。
だけど、

「だけど、それはあまりにも猿に失礼だ」

僕が言えば、彼女は目つきも鋭く僕を見上げてきた。
そんなに睨まなくてもいいのに。

「何でよ」

何でって、そりゃあ。

「その発言は、完全に猿を人の下に見ている」

人差し指を突き付ける。
彼女は不機嫌そうに眉を寄せた。

「…それは、そうだけど」
「というか、君は待ち合わせに20分も遅れておきながら、ごめんの一言もない」
「…それも、そうだけど」

彼女は唇を尖らせる。
じゃなくて、ほら、「ごめん」でしょ。
そう僕が思っても伝わらない。まったく、君という人は。

「…でも」

彼女が顔をあげる。

「人を待たせるのはともかく、優先席で電話するのは、直に命にも関わるんだよ」

…まったく、君という人は。

「だけど、待たされた僕は寂しくて死ぬかもしれなかった」
「ウサギじゃあるまいし」
「そう。僕はウサギじゃない」

怪訝そうな顔の彼女。

「君の見た若者も、猿じゃない」
「……」
「もちろん君も、ウサギでも猿でもない」

彼女は黙り込む。
つまり僕の言いたいことは。

「誰しも間違いは犯し得る。でも、言葉を持つヒトだからこそ、間違いを犯した時にできることもある」

でしょ?

「……遅れてごめん」

暫くの間を置いて、彼女がぽつりと呟いた。

よくできました。

「いいよ」

僕は笑って彼女の髪を撫でる。

「…それにしても、いつもながら、回りくどい」
「だってこうでもしないと、君は絶対に謝らない」
「…それは、そうだけど」

ぽつぽつと不服を零す彼女の髪を、ゆっくりともう一度撫でてやる。
心地いい感触。

「行こうか」
「…うん」

彼女の手を取る。

そう。
詭弁だろうと、何だろうと。

僕たちは、これでいい。


W52SH
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≫ サミシイ背中
By 蓬竜
お題みっつ:母の手・おにぎり・父の背中 次のお題みっつ:猿・ヒト・電車でお願い致します。
2008-01-23 10:50:37
母の手からおにぎりがこぼれ落ちた。元々あまり良い形とは言えなかったおにぎりは、空気の間を滑り落ち、冷たいフローリングにぶち当たると、更にその形を崩した。
「どうしてよっ」
母の声が耳をつんざく。父は何も言わず、ただ休日にある一景のように新聞を読みながら静かに鎮座している。
「なんで、相談してくれなかったの」
私はそれを廊下に座り込みながら盗み聞きしていた。学校に行く前に、いつもなら私より早く家をでる父の靴があったから、おかしいとは思っていたのだけど、帰ってきてからようやく話の成り行きが判った。

リストラされたのだ。父が。

二十五年もの間、同じ会社に勤め続け、朝は早く、夜は遅く、勤勉という言葉が嫌というほど似合う父が、不況に煽られてとうとう会社をクビになったのだ。今まで重く口を閉じていた父が、ゆっくり口を開いた。
「相談してかえられることなら、相談していたんだけどな」
私は父が負けず嫌いなのを知っている。変な所でプライドが高いのも知っている。クビになったのが悔しくて仕方がない癖に、自分のプライドが邪魔して家族に相談できないという板挟み状態に、父はきっと苦悶していたのだ。
ぽたっ、と父の眼から涙が零れて、新聞を黒く染めた。父の背中がどんどんと小さく、哀しくなっていく。
ついさっきまで湯気をたてていたおにぎりが、急速に冷めていった。



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初めましてです。蓬竜と申します。ヨロシクです。
W53T
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≫ 水しぶきの向こう側
By 尚慶騎吹
お題みっつ:シャチ アイス ゲート で、頂きました。 次のお題みっつ:おにぎり 母の手 父の背中 で、お願い致します。
2008-01-19 07:07:06
シャチが、跳ばない。
今日に限ってシャチが跳ばない。

今日は、私にとって生涯只一度の晴れ舞台だ。事実、初めて水族館ショーの舞台に立った時よりも緊張している。
「なんで跳ばないんだ…。」
私には、まだ若かりし頃自らの我が儘で妻子を捨てて蒸発した過去があり、今日は、その妻と娘が私のショーを見に来る予定なのだ。それが故に、私は絶対に失敗したくなかった。
「何だ、何が気にくわないっていうんだ。教えてくれよ、アイス。」
私は憤って相棒の名を叫びながら、彼の潜っているプールの水面を力いっぱい激しく叩いた。
水しぶきが宙を煌めき、その刹那、再び水の底へと静かに消えていく。
一瞬の静寂が辺りを包んだ後、相棒が心配そうに水上に顔を出し近付いて来る。
途端に自分の短気さが恥ずかしくなって、安心させるように彼の頭をそっと抱きしめた。
「お前のせいじゃないよ。悪かったよ、ごめんな。」
解っている。私が焦っているだけなのだ。それはよく解っている。

実は私は、蒸発した数年後より酷く後悔の念に苛まれ始めて、虫のいい話だが許して貰おうと考え妻子に手紙を書いていた。
返事は、来なかった。
幾度も幾度も出した。
それでも返事は来なかった。
当然だ。現実からも借金からも逃げ、彼女達に苦労を押し付けて出て行ったろくでなし男に出す返事等ないのだろう。
今更後悔しているから許してくれと言われても、彼女達にしてみれば、何をいわんや甲斐性無し、といった心もちなのだ。
だけど私は、十年間毎日書き続けた。
『すまない。』
『許してくれ。』
『娘は元気か?』
内容はほとんど毎日同じだった。
そして、ついに先日、十年間待ち望んだ返事が来たのだ。来たのだ!
『貴方には二度と会いたくありません。だけど、貴方の調教したというシャチのアイスを娘が見たいと言うので見に行きます。』
私は、後にも先にも嬉しくて男泣きしたのはあれが初めてだった。

「アイス…頼むよ。」
アイスが私を見つめる。何処かで見た事のある目だ。そう、まるで私が出ていくと決めた日の娘の目に似ている。
「アイス、お前、もしかして…不安だったのか?私が、不安にさせていたのか?」
私の態度がいつもと違うから、彼は心配し、不安だったのだ。
「…解った。もう大丈夫だよアイス。跳べても跳べなくても私達はいつも通り相棒だ。」

ゲートが開き、待ち侘びた観客達が入って来た。
SH902iS
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≫ バースデー、クリスマスプレゼント
By 朱鯨
お題みっつ:キャスケット、絆創膏、キーホルダー 次のお題みっつ:シャチ、アイス、ゲート
2007-11-30 01:19:43

「キャスケットが欲しいな〜」

 彼女に言われたのは、確か去年の夏頃だった。日が沈んで紫色に染まった空を見ながらコーヒーを淹れていた時だった。その脇で手の絆創膏を貼り替えながら、電池の切れかかった時計を見ていた。

「できれば誕生日プレゼントがいいな」

 淹れたての香りをテーブルまで運びながら、キャスケットとは何だろうと考えていた。彼女がいるからといって、ファッションに詳しくなったわけではなかった。いや、ただ疎すぎるだけかもしれない。

「色は灰色で」

 ぽつりぽつりと楽しそうに話す彼女に、少しためらいつつも思ったままのことを口に出すと、

「なんだ知らなかったんだ」

 白いマグカップを両手に持ちながらそっと言った。カーディガンを羽織り、熱で少し顔を赤らめた彼女は、もう一度寝てくると言って席を立った。コーヒーはいいのと聞くと、

「ちょっと熱い」

 そうだったのだうか。いつもと同じように淹れたはずだけれど。薬はと聞く前に、静かにドアが閉まった。よほど体調が悪かったのかもしれない。結局キャスケットのことは聞きそびれてしまった。


 彼女は、夕食の時にも目を覚まさなかった。ドアの隙間から寝室を覗くと、ぐっすりと眠っているようだった。お粥を作るべきかもしれない。一人分にしては多すぎる料理を見てどうしようかと悩んだ。

 困り果てて時計を見上げると、今すぐにでも十時を指そうとしていた。だがよく見ると、秒針が三十秒を行ったり来たりしている。電池が切れかかっていたようだ。ビデオデッキの時計を確かめると、もう日にちが変わりかけていた。思った以上に待っていたみたいだ。

 料理をしまい終えても、時計は十時にすらならなかった。でももう日は変わっただろう。ポケットに忍ばせていた小さな箱を取り出す。指輪を入れるための小さなケース。でも蓋を開けると……。ふふ、キーホルダーが入ってる。指輪はまだ早いよ。今日は彼女の誕生日。枕元にでも置いておいたら、びっくりするかな、怒るかな。



 そして今日、翌年のクリスマスイブ。僕は彼女の帰りを待っている。手にはあの日と同じケース、でも今度はちゃんと指輪が入っている。もちろん、灰色のキャスケットだって準備した。後は、帰ってくるのを待つだけ。

 ほら、帰ってきた。

「ただいま」

「おかえり」


W51CA
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