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電車の座席に座って自分の足元だけを見つめるのは退屈なことだ。バッグに入れた文庫本に飽きると、私はよく同じ車両に乗る人間を観察する。 赤の他人をあからさまに注視するのは体裁が悪いから、ぼんやりと車内を見渡すふりをする。路線図を見ています、という形でさりげなく人物を視界に引っ掛けるのも悪くない。 無関心を装いつつ、視線の先の人間が何を持ち、何を着、何をしているのかを観察する。 圧倒的に多いのは携帯をいじっている人間だが、携帯で何をしているのかはひとそれぞれ。メール一つとってもスーツの会社員なら仕事関係、私服の学生は友達以外にありえない。他には恥も知らずに堂々と通話をする人、流行りの携帯小説を読む人、イヤホンを繋げてゲームに興じる人。ボタンを押す指の必死さと、携帯を閉じる回数で何をしているのかは大体わかる。 他にもおしゃべりの激しいおばさん方、回りの見えない学生連中、大工姿の若い男、電車を足にしているほかに共通点は何もない人間が同じ空間に閉じこめられている。こんな面白い事が他にあるだろうか! 他人に話せばそんな悪趣味なと眉をひそめられそうなことだが、良いことだって一つはある。 調子の良くない足を車両に持ち上げる老婦人にいち早く気づき、私は言う。 「お席をどうぞ」
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