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母の手からおにぎりがこぼれ落ちた。元々あまり良い形とは言えなかったおにぎりは、空気の間を滑り落ち、冷たいフローリングにぶち当たると、更にその形を崩した。 「どうしてよっ」 母の声が耳をつんざく。父は何も言わず、ただ休日にある一景のように新聞を読みながら静かに鎮座している。 「なんで、相談してくれなかったの」 私はそれを廊下に座り込みながら盗み聞きしていた。学校に行く前に、いつもなら私より早く家をでる父の靴があったから、おかしいとは思っていたのだけど、帰ってきてからようやく話の成り行きが判った。 リストラされたのだ。父が。 二十五年もの間、同じ会社に勤め続け、朝は早く、夜は遅く、勤勉という言葉が嫌というほど似合う父が、不況に煽られてとうとう会社をクビになったのだ。今まで重く口を閉じていた父が、ゆっくり口を開いた。 「相談してかえられることなら、相談していたんだけどな」 私は父が負けず嫌いなのを知っている。変な所でプライドが高いのも知っている。クビになったのが悔しくて仕方がない癖に、自分のプライドが邪魔して家族に相談できないという板挟み状態に、父はきっと苦悶していたのだ。 ぽたっ、と父の眼から涙が零れて、新聞を黒く染めた。父の背中がどんどんと小さく、哀しくなっていく。 ついさっきまで湯気をたてていたおにぎりが、急速に冷めていった。 ------ 初めましてです。蓬竜と申します。ヨロシクです。
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