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その6『かくしん!はんにん人間説』




「羽入うぅううーーーっ、聞いて聞いてっ」
「はぅあぅ!?」私が起き上がるなり、そう言うと羽入はびくびくっと肩を震わせ、私の嗜虐心を煽ったが、今はそれも気にならない!
「犯人がわかったの!」
「だ、誰なのです?!」
ちがうちがうちがうちがうう、私はブンブン首を振る。
「犯人がいることがわかったの!!私は人に殺されてるのよ」

「人に!?」
羽入は驚きに目を丸くする。それもそのはず。だって羽入はずっと、不慮の事故説をとっていたのだから、ちなみに私は病死説!でもどっちもちがった!人が犯人なんて盲点だった。誰も考えない!羽入が狼狽えながらも、私をただしにくる!
「あうあう?人はあり得ないって、あれほど話合ったはずなのです…だって梨花は女王感染者」
「確かに、この村に私を狙う人なんていないわ、でも、確実に人に殺されてるのよ!」

「こ、根拠はなんです?ちょっとやそっとの根拠じゃ僕は認めないのですよ」
羽入の戸惑う様子を見て、私はジワジワとした喜びを覚える。羽入の反応はちょっと前までの私、その羽入が想像も出来ない真実…、それを知った「根拠はこれよ!これなのよっ」そう言って私はスカートのポケっとから、ハンカチを取り出す。羽入はますます首を傾げる「ハンカチ…?」
「今回の最後の記憶に残ってたわ、私ね、死ぬ前にハンカチで口を覆われるの…、その瞬間フッと意識がなくなったから、多分薬みたいなので眠らせられてるんだと思う……、そんなこと、人以外にできると思う?」「はぅあぅ…?」
羽入はゆっくりと内容を吟味したあと、やがて優しい表情で、小さく首を振る…
「…思いません。それなら人がしているのでしょう。確かな証拠なのです……でも、一番嬉しいのは」「ええ、羽入にもわかる?」
「はい……おめでとう梨花。もうこれで、死の恐怖に震えることはないのですよ」
「うん…っそうね…。もう怖がらない…怖がらないですむ。だって眠らせられてるんだもの、ぐすっ…今まで怖がってたのが、バカみたい」
「…あう?泣いてるのですか?」「う…く、ひっく…ごめん、いまだ…け泣かせて…」「まったく、梨花は甘えんぼなのです」
羽入に抱きしめられると、ポロポロと涙が溢れる。やっぱり羽入はわかってくれた……、私が本当に嬉しかったのは、真相に近づいたことじゃなくて……死ぬ前に眠らせられてること…、今まで死ぬ日が近づくと気が狂いそうになるくらい怖かった。……死ぬ時はどのくらい苦しいんだろうって想像するだけで、体が震えて、吐き気がした。手足がもがれる?内臓が破裂する…?それとも、心臓がとまる?息がとまって苦しみながら死ぬ?
酸欠の苦しみに慣れようと、息を止めたこともあったっけ、……ただ苦しくなるとやっぱり息を吸ってしまって、余計に死ぬ日が恐ろしくなった。泣いても泣いても泣き足りなくて、眠れない日もあった。
……でもそれは全て杞憂だったのだ。眠らせられてると言うことは、死ぬ時、苦しまずにすむということ……だって、眠るように死ねるのだ。意識がなければ、その後どんな死にかたをしようが、怖がる必要はない。眠った時が死ぬ時……それは幸せなこと
いつしか私の涙が落ち着いた頃、羽入の穏やかな声が脳裏に響く

「梨花…、今日はお祝いしましょうです。ワインを飲んでもいいのですよ」
「ううん。今日はイジワルはなし、甘いものとオレンジジュースで乾杯しましょう」
私がそういうと、羽入は本当に嬉しそうに目を細める。
…人が犯人ということは、私を殺してる人がいると言うことだけれど、……少しだけ、その人にも感謝したい気分だった……



不毛なる梨花日記6…完














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