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その4『ながれて☆まるなげ幸福論』




「決めた。私はこの世界では何もしない。努力もしないし、運命とも戦わない。だって、私が戦ってもより不幸になるだけ、悪化するだけ、むしろ気楽にした行動の方が大成功を納める。だから戦わず、流されてた方がきっとうまくいく。そうは思わない?」

陽光煌めく沢の流水に素足を浸しながら、力強くそう宣言すると、羽入も涼やかに微笑む。
「僕もそれがいいと思いますです。流れに逆らうことは、心を苦しめるだけ、不幸になるだけ、それならば、流れの行きつく先の中から、自分の一番幸せなものにたどり着けばいいのですよ」
「一番幸せなもの?」「はいなのです。梨花が幸せと思えるもの…なのですよ」

その透明な笑顔に、私の心も楽しくなる。流れの行きつく先か……、私はキラキラと輝く沢の水を眼で辿って、滔々とした流れの先を先を辿って辿って、心に入れる。この沢の先を流れていけば、やがて海に辿りつく。海は大きくて広くて美しくて、色々な幸せに溢れている。不幸なこともあるけど、必ず幸せを見つけられる。
私は羽入にそっと呟く「そうね。この沢を辿れば、幸せにいつかきっとたどり着ける。私の望む、幸せな未来に」「……はい、きっと、梨花は幸せになれますです」「ええ」
そう言って頷いた私の目には、沢の流れがまぶしいほどに輝いていた。




「はっ…ふぁ…ぐすっ…うぅううう…っ」私は、悲しくて悲しくて涙を拭くのも忘れて、八畳間に駆け込む。羽入が驚いたように私に尋ねる。「どうしましたのですか?」ぅううぅうぅ…っ
「うぅ……ぐすっ、沙都子が叔父に連れて行かれたわ…」「えっと……」
私は畳に転がり涙を溢す。羽入はおろおろと戸惑い顔。「梨花、おちついて、まだ決まったわけではないのです」「……ぅぅ」
そんなんじゃ私の悲しみは拭えなくて、畳に涙の染みを作りながら、ぐすぐすと暗い考えに身を浸す。
どうして?どうしてこんなことに?叔父はこれから沙都子を虐める。もう私が何をしても、何一つ変わらない運命の袋小路、最悪の世界、私はもっと幸せになれるんじゃないの?運命の流れに身を任せて、泳ぎつく先で幸せを掴んで、幸せになるって…あの綺麗な沢みたいに、幸せになれるって……
だって、今までは、抵抗したせいで不幸のどん底に落ちてたんだから、抵抗しないこの世界は今までで一番幸せになれるはずなのに……、どうして沙都子が……、
しばらくの間……、そう悲嘆にくれていると……、一つの絶望的な事実に気づき、茫然と口を開く…あ……
「…ぬま」
「あう…?なにが沼なのですか?梨花」
「……ぐすっ、わすれてた。わたしの人生が、沼みたいによどんでること、ひっく……沢みたいに流れてなんかない……」
「梨花、そういう考えはよくないのですよ。暗い考えは暗いことを呼び寄せます。だからにぱー、と明るく笑ってくださいです」
「ひっく、…さっきまで明…るかった…、わ、わたしは流れにのってたら、幸せになれるって信じてたから、暗いことなんてかんがえてない…でもさとこが…さとこが連れていかれて、……ちっとも、ながれてないじゃない…ふこういがいなにもえらべないから…」「ぁぅ……、沼だって風が吹けば、流れるのですよ」「ん…く……いいからひとりにして…はにゅう…ぐす…っ…うぅぅ」「…はい」
私は…暗い気持ちにたゆたいながら、そっと決意する…、次からはまた。たたかおうって……ひ…っく、ぅっ…


……不毛なる梨花日記4完








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