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その2『がんばれ!れなれな包囲網』




「今日が、レナが学校占拠する日だけど……、本当にこれで上手くいくのかしら?」

私は窓ガラスの外、雨どいに空いた穴からぽたぽたと滴り落ちるガソリンを眺める。
雨どいの先にはボールが詰めてあって、中にガソリンが溜められる仕組みになっているのだが。
私が昨日の夜、配管に穴を開けたから、そこからガソリンが漏れだして、校庭に水溜まりもとい、ガソリン溜まりを作っていた。じきに雨どいの中のガソリンは無くなるだろう。
これでキッチンタイマーの罠は無力化完了。レナは今頃歯噛みしてる頃にちがいない。そう思うと不謹慎だが心が踊る。
でも実はこれは次善の策、本当の策はガソリンを水に入れ替えておくものだった。
レナに鉢合わせしないよう私は一昨日の夜に学校に忍びこみ、学校内のガソリンを、全て水に入れ替えて置いたのだが、結局昨日、営林所の人が気づいて、ガソリンにもどしてしまった。……警察まで来た。怖かった。今でもまだガソリンを盗んだ犯人を捜査中。正直捕まりたくない。
私の思いもしらず、羽入が嬉しそうな笑顔になる。
「あう、レナの計画をことごとく失敗させれば、レナは打つ手がなくなり、占拠を諦めるのですよ」私はすぐに気を取り直し笑みを見せる「くすくす。レナはああ見えて冷静だし、失敗が続けば計画を諦める。その時説得すれば、あるいは、惨劇を免れるんじゃ」

そう、それがこの計画の主眼。レナの学校占拠の作戦を全て失敗させることで、レナの学校占拠自体を未遂に終わらす!!
私は、そのために打った全ての布石を思い返す。
まず一つはさっきのキッチンタイマーの無力化、そして次は知恵を学校に留めおくこと、レナは幾つもの世界で、占拠の前に、二階から知恵に電話をし、話があると騙して、知恵を学校外に追い出す。
しかし、今回はそれができない、私が職員室の電話線を切ってるから、繋がらないのだ。知恵にはいっぱい怒られたけど、
だから今回は、知恵に電話が繋がらず、またまたレナの計画は失敗!!レナが受話器を持ちながら焦ってる姿が目に浮かぶ。
そして、こっちが本題なのだが、今回は魅ぃの連れて来るボディーガードたちを、頼みに頼んで増員してもらった上、全員廊下や二階への階段に配備した。その数なんと10人!それも全員武道有段者!スタンガン持ち!
普通なら彼らは知恵に見つからない場所にしか配備できないが、今回は、勉強を邪魔しないならという約束で、知恵からの許可は取ってある。だから彼らは今回何の制約も受けず、校舎内を自由に動ける。
だからレナが二階から降りて来る場合、真っ先に彼らと鉢合わせすることになり、一人に見つかれば十人ともすぐに集まってくる。その上ボディーガードは二人一組にしてあるから、不意討ちもきかない。
さしものレナでも、これだけの防備は突破できまい。10人もいてスタンガンを有した有段者と、人質もいない状態で闘えるわけがない。ガソリンと鉈だけの女子中学生に何ができよう。ここで羽入が悪い顔をする。
「あうあう、もういっそ、ボディーガードたちを二階に突入させるのはどうです?スタンガンで気絶させてグルグル巻きにしてから、話をすればいいのですよ!」私もニヤリと笑って、魅ぃを呼んだ。「何?梨花ちゃん」「みー☆実はレナは二階に隠れてるのです。ボディーガードさんたちで捕まえてくださいです」「そういうのは早く言ってよ!すぐ捕まえるから」
魅ぃもすぐ乗り気になって…、でもここで邪魔が入る。圭一だ。「そういう力づくは後にしてくれ、まずはレナを説得したい」「魅ぃ、レナを捕まえてくださいです。話し合いはそれからでいいのですよ。にぱ〜☆」私は笑顔で一蹴して、魅ぃに頼む。現実は圭一が考えるほど優しくないのだ。でも圭一は諦めない!「まだ話し合えばわかる。頼む!俺に任せてくれ!」
魅ぃは板挟みに迷いに迷って、「ごめん圭ちゃん、皆ー!いい!二階にレナが」ボディーガードたちを二階に突入させる。六人もの大部隊!四人は護衛として廊下に待機、抜かりはない。ドカドカと二階にボディーガードが消えていき。
私と羽入は、それを見送り、おおいに勝利を確信したあと、崩れる天井と一瞬閃光が見え……ザアアと記憶が途絶えた。どうやら死んだらしい。


次の世界で目覚めるとすぐに、私は混乱した頭のまま、羽入に詰め寄る。

「どうしてっどうして失敗なの?レナの計画はことごとく失敗させた!ボディーガードまで突入させたのに!」
羽入は沈痛に俯く。「僕たちは、レナを苛めすぎたのです。失敗の続いたレナは途中で二階にガソリンを撒いたのでしょう。
それでついに、諦めて……」「ガソリンに点火?」羽入は重々しく頷く「そして……爆発」

……なんか泣けてきた。全部うまくいったのに。結局爆死するのね、どころかいつもより早く死ぬなんて……、レナのバカ
「……どのくらいの計画を成功させてあげれば、レナは満足するのかしらね?爆発させない程度に…」
「あぅ、二階での爆発と、レナの性格から考えると、おそらくは一つ頓挫させたら、怪しいかと、……これは推測ですが、レナは雨どいのガソリンが漏れてるのに気づいた時点で、二階にガソリンを撒いた可能性が高いです」
「ということは、次からは、見てるしかないのね、少なくともレナが人質とるまで…、だって一つ頓挫させたらアウトだもの。何よそれ…、まるで世界が私には何もするなって言ってるみたい」
「あぅあぅ……、梨花は冗談半分で言ったのかもしれませんが、意外とそれは正しいのかもしれません。梨花は何もするななのですよ……」
「どういうこと?」
「今まで見てきたかぎり、梨花が動けば動くほど、世界はしっちゃかめっちゃかになりますです。梨花が動いた世界より、何もしなかった世界の方が、被害が少ない。これは統計上確実に言えますです。僕たちは、幾度も幾度もより悪化した世界を見て来ました。僕たちの行動によって」
「そうね、成功したのはちょっとなのに、悪化したのは、数えきれないほどあるわ。それは否定しない。でもそれが何を意味するの?」
「知ってますか梨花?」
「何を?」
「本人は良かれと思い動いていても、結果的により事態を悪化させる人の存在を」
「確かに、今の私みたいね。最善の手を積み重ねたあげく、皆の死期を早め、知恵やボディーガードを余計に殺した」
「……人は、そういう人をこう呼びます」
「……なにかしら?」「あう……こんなこと言いたくないのですが……、言うなれば梨花は…」
「うん、私は?」
「トトト……トラブルメーカー」
「……え」
…………………………トラブルメーカー?え?羽入いまトトトトラブルメーカー


 ……不毛なる梨花日記2完








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