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「あの人…、本当に私のお兄さんなの…?」

今は、あの町を離れて汽車に揺られている。

「あぁ、そうだ。
…何でそう思うんだ?
隼人兄の言ったとおり、思い出したって言ってたじゃないか」

「うん、思い出したよ。
思い出したんだけど…。
ふと気付いたんだけど、私が思い出した記憶って、本を読んでるみたいなの」

「本?」

「うん。
それ自体に絵なんか無くて文字の列が整然と並んでるだけで、それを読んで初めて頭の中で映像を作ろうともがく…。
…そんな感じの、本」

「じゃあ、お兄さんの顔も、親の顔も、育った場所の景色とか、分からないんですか!?」

私達の前のコンパートに座るアレンが、上から覗き込むようにして話してきた。

「そんな感じです!」

大声で答えたが、既にユウに追いやられていて、姿が見えない。

「でも、あいつが隼人兄で間違いない」

「…そう。
あともう一つ気になるんだけど…あのお兄さんが言ってた事…。
私が徐々に思い出してる記憶が、本当に私のものなのか…って」

「…何言ってんだ?
お前、オレといた時間を疑ってるのか」

「え?
ち、ちが…。
そういう訳じゃ無くて…」

「いや、そう言ってるのと同じ事だ」

本気で怒っているのか、そっぽを向いてしまった。



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