8 「あの人…、本当に私のお兄さんなの…?」 今は、あの町を離れて汽車に揺られている。 「あぁ、そうだ。 …何でそう思うんだ? 隼人兄の言ったとおり、思い出したって言ってたじゃないか」 「うん、思い出したよ。 思い出したんだけど…。 ふと気付いたんだけど、私が思い出した記憶って、本を読んでるみたいなの」 「本?」 「うん。 それ自体に絵なんか無くて文字の列が整然と並んでるだけで、それを読んで初めて頭の中で映像を作ろうともがく…。 …そんな感じの、本」 「じゃあ、お兄さんの顔も、親の顔も、育った場所の景色とか、分からないんですか!?」 私達の前のコンパートに座るアレンが、上から覗き込むようにして話してきた。 「そんな感じです!」 大声で答えたが、既にユウに追いやられていて、姿が見えない。 「でも、あいつが隼人兄で間違いない」 「…そう。 あともう一つ気になるんだけど…あのお兄さんが言ってた事…。 私が徐々に思い出してる記憶が、本当に私のものなのか…って」 「…何言ってんだ? お前、オレといた時間を疑ってるのか」 「え? ち、ちが…。 そういう訳じゃ無くて…」 「いや、そう言ってるのと同じ事だ」 本気で怒っているのか、そっぽを向いてしまった。 . [*前へ][次へ#] |