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「あの、ゴメンね…?
本当に、過去を否定した訳じゃ無くて、私の記憶だって誇りを持って言いたいし、…ユウと会えて、本当に良かったって思ってるよ?」
「…知ってる」
「(あ、これは照れ隠しの声かな)
記憶が無くて…自分の事が…分からなくなる時が…あるの…」
両手の中に顔をうずめる。
「霊に取り憑かれてるみたいに…別の人の記憶が移って来たんじゃないか…って思う時があるの…」
「(どんな例えだよ)
その記憶が香奈のものじゃ無くても、お前はお前だ。
…怒鳴って悪かった。
今を記憶しているお前が好きなんだ…」
「へぇ…。
じゃあ、ずっと昔はそんなに好きじゃなかった?」
「え…?
いや、好きだったぞ?」
「あ〜そう、嘘なのね。
…それでも良いから…」
「あぁ、香奈はオレの腕の中にいればそれでいい」
顔を両手にうずめていた私を、背中から抱きしめてくれた…。
…今が大切なんだよね。
「…どんな自信だよ」
「うるせぇ!」
本日2度目のキスをしていると、視界の端に人影が…。
「…六幻、抜刀!
出てこい、モヤシ!!」
「すっ、すいません!
覗く気は決して…!」
「容疑者は皆必ずそう言うもんだ!」
「わぁ〜っ!
すぅいまっせぇ〜ん!」
その後、ユウは一人で次の任務へと向かい、私はアレントマと共に教団へと向かう。
私は、
一時の幸せを
味わった。
1番幸せなのは
この時だったのかな…。
何も
知らない方が
良かったなんて
思ってしまう…。
何も
知らなかった
この時、
これから
知らされる
事実なんて、
思いもよらなかった…。
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