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京七小説

小春日和のぽかぽか陽気に誘われるように、七緒は外に出た。
足は自然に八番隊隊舎に向かっていた。
今の時間なら隊長はきっとどこかでさぼっているはずだ。

思った通り、京楽は屋根の上で昼寝していた。
音をたてないようにそっと忍び寄ったのだが、近くに行くと軽いいびきはぴたりとやんだ。
京楽は顔の上にかけていた傘をよけて、微笑んでみせた。

「おんやぁ。どこからきたのかなあ。おいで」

差し伸べられた手は、人でいる時よりも数倍大きく感じられる。
七緒は片手でひょいっと持ち上げられた。京楽は腹へ視線を走らせて言った。
「あ、君、女の子なんだ」
なんというデリカシーのなさ。七緒は心の中でため息をついた。
だが全裸でいるという恥ずかしさは不思議と感じない。
そういうところは猫の感覚になっているのだろうか。

「よーいしょっと」
京楽はそのまま自分の胸の上に七緒を置くと、頭をぐりぐりなでた。
「今日は七緒ちゃんが休みで、僕さみしいんだよね」
それだったらお仕事して下さいよ。
確かにそう言ったつもりなのに、七緒の口から出たのは「ナアアア」というわけのわからない音だけだった。
もちろん京楽に通じるわけもない。

言った七緒本人も、次の瞬間には、そんなことはどうでもよくなった。
なにより今の七緒は副隊長ではなく猫なのだ。
本能の赴くままに京楽に体をすりよせ、耳たぶを噛み、首筋や髭の生え際をちろちろと舐める。
「こらこら。くすぐったいよ」
そういいながらも京楽は押しのけようとはしなかった。

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