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京七小説

昼御飯を片づけたあと、七緒は準備を始めた。
使っているちゃぶ台の上に鏡と時計とコップ一杯の水を並べる。
お風呂を沸かし、気分が悪くなったときのために布団を敷く。
これでよし。
念のため眼鏡と髪止めをはずすと、白い丸薬を手にとった。

これは女性死神協会で、夜一がみんなに配った「猫になる薬」の試供品である。
効果は人によるが5時間から8時間。
今日非番だった七緒は試してみることにしたのだった。

飲み込んでしばらくすると、ゆらりと目の前の景色が揺らぎ、
七緒はいつの間にやら猫になっていた。

出しておいた姿身を前に行ったり来たりしながら、自分の姿をしげしげと観察した。
頭の先から尻尾の先まで淡いグレーのつややかな短毛におおわれている。眼の色は紫。
最初のうちは何か遠いところから体を操っているような気がして、違和感があったが、
徐々に慣れ、その動きのしなやかさが楽しくなりだした。
見慣れた部屋がいつもと違う。
突然子供に戻って木登りに最適な木を見つけたときのように、はしゃいで部屋中を駆け回った。

服を着ていないという開放感と共に、化粧をしたり着飾ったりするときに感じられる高揚感もある。
いつもの自分でなくなっている。
なんだか今日は大胆になれるような気がする。

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あきゅろす。
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