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京七小説

ひとしきり戯れた後、七緒は京楽の傍らで丸くなった。
京楽が低く歌う都々逸が子守唄のように聞こえる。
「横に寝かせて、枕をさせて、指で楽しむ、琴の糸」
思い出したように尻尾や首筋にちょっかいを出してくる京楽の指先と戯れていると、
自分が歌の通りの琴の糸になったようで、七緒はおもわず喉を鳴らした。

怠惰な、甘い時間が過ぎる。
気がつくと、午後の日が傾きかけていた。そろそろ戻らなくては。
七緒はゆっくり立ち上がると、くるまれていた桃色の羽織から抜け出した。
「あれ。もう行っちゃうのかい。つれないなあ」
京楽は寝返りを打つと、七緒を自分の胸に引き寄せた。
「ぼくんちにおいでよ」
眠そうな声で語りかけられると、なんだか睦言のようで、七緒は一瞬その気になりかけた。
腕の中に突然全裸の自分が現れたら、どんな顔をするだろう。
でも
「帰りに煮干し買ってあげるからさあ」
と言われて一気にわれに返った。
相手に合わせて口説いているのはさすがだけど……。
七緒はするりと腕の中から抜け出した。
「あれ、待ってよ」
引き留めようとする京楽の手をかいくぐると、身をひるがえして駆け去った。

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あきゅろす。
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