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小説2 (鬼×神と人のハーフ) 完結
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〈紫陽はまだ幼い。ここで暮らす事さえ承知させれば、後のことはゆっくりでいい〉

主夜は自分に言い聞かせて、一度大きく息を吸った。

「あのな、紫陽。どうして俺がお前を置いて戸隠へ帰ってしまうなどと思ったんだ?」

「って…。陰陽の人たちが…」
「あいつらが何を言った?」

「ぼくが18歳になったら、主夜さまはここからいなくなるし、ぼくもここを出て行かなくてはならないけど、住むところがなかったら、ここに居てもいいって…」

主夜の瞳が悔しそうに眇められる。
今まで散々紫陽に怪我を癒してもらっていたくせに、ここに居てもいいとは、何という言い草だ。

「紫陽、俺がこの家で暮らせと言ったのは、ずっとという意味なんだがな」
「ず…と?」

紫陽の頭がかすかに上がった。

「そうだ。お前さえよければ、ずっと俺のそばに居てほしいんだが」
「駄目…です」

「小屋にこだわっているわけじゃない。この家は居心地がいい。俺のことが嫌いなわけじゃない。…それなのにどうしてこの家で暮らすのが駄目なんだ?」

「…つらくなるから…」

「何がつらいんだ?そのつらくなることを排除すれば、お前はこの家で暮らしてくれるのか?だったら…」

「主夜さまでもどうにもならない事です…から、もう、ぼくには構わないで…」

「この家で俺の思い通りにならないことなどあるものか。遠慮せずに言ってみろ」

「…。聞いたら、主夜さまはぼくのこと嫌いになる…。戸隠へ帰ってしまうかも…。もう少しだけでいいから、主夜さまのそばにいたい」

「紫陽、俺がお前を嫌いになることはないし、お前をおいて戸隠へ帰ることもない。心配しないで話してくれ。どうすればこの家で暮らしてくれるんだ」

紫陽が毛布の中でしくしくと泣き始めた。

主夜はうろたえて紫陽に手をのばし、ソファに腰かけて華奢な体を毛布ごと膝の上に乗せた。

「すまなかった。辛いなら話さなくていい。泣くな」
毛布越しの紫陽の背中を撫でながら、泣き止むのを待つ。

「ちがっ…、主夜さまが悪いんじゃ…ないです…。ぼくがっ…。ぼく、男だから、男の主夜さまが好きなのは変だって…解ってるのにっ。こんな気持ち、持っちゃいけないって解ってるのに…会うたびにもっと好きになって…」

主夜の呼吸が止まった。
紫陽の背中を撫でていた手も止まってしまう。

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