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それより、と言ったまま、黙り込むそいつ。
刺青のことか?
瞳のことか?
それとも…何か別のこと?
俺を見て持つ疑問なんて山ほどあるだろう。
でも逆に、外見にばかり気を取られてくれるっていう利点がある。
中の事情とかそういうのにまで踏み込んでくる人達はあんまり、いない。
それでも少数の人間はずけずけと踏み込んできたりだとか。
そういうことが、これからないわけじゃないだろうと思う。
でもそんなの俺には関係ないし。
面倒だ、そんなの。
「いや…何でもねえ。クラス行くからついてこい。もう大体のことは聞いてんだろ?」
そう言ってそいつは立ち上がる。
時間を見れば、8:42。
チャイムが鳴ったことには気づいていた。
でも誰も出て行かないから、不思議には思っていたのだけど。
俺たちが動き始めると、それに影響されるように周りの空気も流れ出した。
あ、そういえば俺、まだこいつの名前知らない。
(まあ何でもいいか。)
前を行く背中に、固有名詞なんてつける意味を俺は見つけられなかった。
未来と、裏の人間と、その他大勢。
その区分さえあれば、充分すぎるだろ?
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