4649 10 それより、と言ったまま、黙り込むそいつ。 刺青のことか? 瞳のことか? それとも…何か別のこと? 俺を見て持つ疑問なんて山ほどあるだろう。 でも逆に、外見にばかり気を取られてくれるっていう利点がある。 中の事情とかそういうのにまで踏み込んでくる人達はあんまり、いない。 それでも少数の人間はずけずけと踏み込んできたりだとか。 そういうことが、これからないわけじゃないだろうと思う。 でもそんなの俺には関係ないし。 面倒だ、そんなの。 「いや…何でもねえ。クラス行くからついてこい。もう大体のことは聞いてんだろ?」 そう言ってそいつは立ち上がる。 時間を見れば、8:42。 チャイムが鳴ったことには気づいていた。 でも誰も出て行かないから、不思議には思っていたのだけど。 俺たちが動き始めると、それに影響されるように周りの空気も流れ出した。 あ、そういえば俺、まだこいつの名前知らない。 (まあ何でもいいか。) 前を行く背中に、固有名詞なんてつける意味を俺は見つけられなかった。 未来と、裏の人間と、その他大勢。 その区分さえあれば、充分すぎるだろ? [*前へ][次へ#] [戻る] |