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「そこに立ってないで、さっさとこっちこいよ。」


そいつのその言葉で、纏わり付いていた視線たちが霧散する。
教員室の中に、人が集まる場所特有の騒がしさが戻っていく。

でもみんな、こっちに意識を残したまま。

そこで俺は、自分が軽く手のひらを握っていたことに気づいた。



緊張、してたのか。
自分ではそんなつもりさらさら無かったのだが、体はわずかに緊張していたらしい。

ほんと、心と体って別物だ。



「しっかしお前、変な髪色してんなぁ。白髪?病気だったのか?」

「違います。」

「ふーん、まあいいや。それより、」

じゃあ聞くなよ。
教師とは思えない口調にけれど違和感を感じないのは、こいつの外見のなせる技だろう。


髪は黒と茶色の中間くらいの、ダークブラウン。
肩に少しつくくらいの長さ。
目も同じ色だから、地毛なのかもしれない。

背は多分俺よりちょっと高い。
結城と同じくらいだろうか。

そして、眼鏡。
片方の頬を上げるように笑うのは、きっとわざとだろう。

弱そうにはみえないけど、裏の世界の人間が持つ独特な空気も感じられない。
それにそっち側の人間なら、そもそも叶多を、白いジョーカーを知らないはずはないから。


叶多は、自分よりも強い人間が日本にはいないことを知っている。
それは過信でも虚勢でもなく、事実。

ジョーカーは、いつだって最後で最強の切り札だから。




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あきゅろす。
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