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よみもの~中等部編
9 ~canon

音楽室を出てすぐ、私は由香ちゃんにメールを送る

  Re;今終わりました。私、図書室に行く?

   Re;私がそっちに行く。
      どこ?第1音楽室?それとも視聴覚教室?

    Re;第1があいてるみたいだから、そっちにいます。
       使えそうになければ、視聴覚教室でいい?

     Re;了解。

第一音楽室には誰もいなかった
ここで練習して待ってよう
ピアノをあけて、楽譜をのせる

今日頂いたコンクール用の曲

本当は、違う曲を弾きたかった
そのつもりで、譜読みもしていたのに。。。

ぱら、ぱら、と、楽譜をめくると、何とも言えないキモチになる

。。。でも、先生のおっしゃる通り
『あの曲』は私には『まだ早すぎる』
私にはまだ。。。ムリ。。。

コンクールは『勝負』だ

好き嫌いじゃない
いくら好きでも、勝てなきゃ意味がない

好き嫌いなんて、勝ってから言う事、よ。。。

でもこの曲だって、とっても素敵だもの
今から『もっと好き』になればいいだけ


ピアノを弾き始めてすぐに、由香ちゃんが音楽室にやってきた
遠慮がちにドアを開いて、顔をのぞかせる
ピアノのすぐ横まで来て、お茶会、どうだった?って尋ねる

「先生の持ってきたケーキがスゴくおいしかったよ」

そう言うと、由香ちゃんはへぇ、と笑った

私は椅子に座ったまま、くるん、と身体をまわして、窓の外を眺める
わ〜、はずえクン、まだモテてる
桃城君も沢山の女の子に囲まれてる

海堂君は。。。いたいた
桃城君に負けないくらい、モテてる
けど、やっぱり女の子達が遠巻きになってる
こんな日くらい、もうちょっと愛想良くすればいいのにね、なんて、思っちゃうけど。。。
ホントは、ヤキモチを焼きたい気分だったりして

なんか私って矛盾してるなー、なんてイロイロ考えてたら、笑えてきちゃう

ごとごと、と、由香ちゃんがもう一つのピアノの椅子を引っ張ってきた音に、ハッとした
イヤだ私、一人でにやにやして、ホント、ヘンな人全開じゃないの

「ああ、そうだ」

照れ隠しもあって、今思い出したようなセリフ
ちょっとわざとらしかったかな?

「残しててもしょうがないから、って、ケーキ、みんなで分けたの
 由香ちゃん、お腹空いてない?」

ピアノの上のケーキを渡すと、あ、ありがと、と由香ちゃんはビックリ目になった
そして、がざがざと包みを開けると、がぶー!って、大口でケーキにかじりついた

「あ、おいし...」

「わ〜、由香ちゃん、豪快にいったねぇ」

らしくない由香ちゃんに、ちょっと驚いた
でも、二口目をかじりながら、ニッって笑う由香ちゃんの目が、いつも通り勝ち気で良いな、って思う

私もコレくらい強くいられたらな、って、羨ましく思うよ?

さ、もう少し練習しよう。。。

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