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詩集
夜中の太陽
もう数週間になる

太陽が出ていない日数のことだ
ここのところ異常気象の影響を受けてか
太陽がのぼらない
うすあかりのようなわずかな光がある
くらやみに目がなれてきたのかもしれない
雨はときおり振る

このビルは六階建てになっていて
エレベーターはない
古い建築物だ
電力の供給はとまってしまっているから
エレベーターがあったってあんまり意味もない
雨はいまあがっている
空は曇っているようにも見える
あまり遠いものは皆見ようとしない

屋上には鋼鉄製の雨樋がある
そこに生していた苔のようなものが
古い夜にとけていきそうなくらい
黒く変色して樋に浮いていた
屋上の床はすこしぬめりがある
雨が降るとうすれ
つぎの晩にはまたぬめる

ハンドルのついた懐中電灯を持って
ときおり人が道を走っていく
居間の姿見が真っ黒なとびらのように見える
話し声がしない
虫の羽音もない
耳に酔い止め薬がつまっているような気がする
舌の根が苦い

オイルライターがあるが
たばこがどこにもない
火をつけてみると
思わずとびのくほどの虫が飛んで
すぐあとにカーテンが大きく揺れた
カラスがどこかで一度叫んだ
鼓膜はどこかくすんだような音をだす

むきだしになった電子ピアノの鍵盤が
獣の歯の化石みたいに見える
白さはもう固まった記憶の中にしかない
ゴンチチがどこかから聴こえる
高音のピッチがはずれている
こうもりが歌っているみたいだ

都心はどうなっているのだろう
さっき走っていった人は
本当に懐中電灯を持っていたのだろうか
本当は明かりなんてついていなかったんだろうか
夜中に太陽はでない

どなたかひかりについて話してはくれませんか
あなたのいるその部屋はまぶしいのですか
その夜がすぎたら
朝が来るんでしょうか



あきゅろす。
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