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詩集
-サイレン
風通しの悪い部屋は真っ暗です

男の子がひとり
女の子がひとり
ひとりの男がひとり

女の子が立ち上がって
男の子が汗を拭きます

女の子が窓を開けて
男の子がアルミホイルを千切る

男が机の引き出しを開けて
ざらめのような粉を取りだします

女の子が汗を拭いて
男の子がそれをじっと見ている

ざらめをアルミホイルにのせて
男が水をかけます

男の子は網戸の蛾に目をとられ
女の子は腕をさしだす

にごった水をくゆらせる下で
男はライターに火をつけます

女の子があぶったホイルを受け取って
男の子がひざをゆする

女の子の手の真上では
部屋がやわらかくゆがんでいます

男の子はながれるようにたおれ
女の子は目をこする

男はE調のハーモニカを取り出して
男の子のとなりで耳鳴りのような息を吹きます

女の子が男の子に深くよりかかり
男の子は少し寝返りをうつ

男は飛び出すように部屋を出て
大きな音で咳をします

男は部屋の窓を閉め
遠くの街灯を見ながらもう一度咳をする

遠くにサイレンが聞こえます
子供たちは眠ったままです



あきゅろす。
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