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詩集
すずめばち
すずめばちが
私の鼻の頭をかすめてすぐに
黒い影になって
薄くなって
細い軌跡を残して
小さな河原の巣に帰る

すずめばちの
しなやかな軌跡をかすめてすぐに
自転車のタイヤの擦過音が
ヘッドライトの光の粒を巻き込みながら
やっぱり薄くなって
やっぱり黒くなって
細い
華やいだ記憶を残して
小さな官舎の巣に帰っていく
華やいだ記憶は
私の隣に伸びた
街灯の支柱に沿って駈け上がり
華やいだままで
日付の違う空の向こうに
すすめばちの匂いのする
憧れを届けている

私は
憧れを選びとる
明日だか明後日だかの
幸福なひとびとに向けて
たばこのけむりを吹き付け
冷たい焼却炉のうえで
夜空が焼けてしまうまで
じっと
河のにおいを嗅ぐ



あきゅろす。
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