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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story37 時使いの少年






「・・・・・・・・・・」


クロノスロードは宿屋の前にいた。


暫くして、スッと目をつむる。


そして頭には数時間前の光景が浮かんできた。


宿屋から出て行く二人の男。


ひとりは銀髪に漆黒の瞳


もう一人は赤毛の黄色い瞳


昨日見た悪魔の連れだ。


「・・・・・・・・・・ここか」


クロノスロードは目を開け、
宿屋に足を踏み入れた。


『・・・いらっしゃい・・・ってガキか。迷子か?』


「・・・・・・金髪の・・・・・お姉さん・・・・・・ここに・・・・いる・・・・・」


『ん?ああ、あの子たちの知り合いか?たしか206号室だよ。』


「・・・・・・・・・・・」


クロノスロードはそのまま何も言わずに、
二階に上がりはじめた。


『・・・?イヤなガキだぜ・・・』



二階につくと、
クロノスロードはさっそく206号室を探し始める。


すると突然、
少し先の部屋の扉が開き、
一人の少女が飛び出し尻餅をついた。


「いっ・・・・・・たぁ・・・・B.B.のバカぁぁ・・・!!!」


その少女はすでに閉められた扉に舌を向けた。


そして少女は体をくるりとして、
クロノスロードの方へ向かってくる。



その髪は薄黄色、瞳は血のように赤かった。


そう・・・僕が探していた・・・・


「・・・・・・・・・・・・・・見つけた」


「・・え・・・?」


ムジカは目の前で自分を見つめてくるクロノスロードに気がついた。


「・・・・・・!たしかキミ・・・・!!」


ムジカは昨日の光景を思い出す。

自分を"悪魔"と呼んだ少年・・・


「・・・・・・・」


するとクロノスロードは何も言わず、
ムジカの手を引き歩き出す。


「あ・・あの・・・さ・・、どこ行くの?」


ムジカはかなり戸惑いながら
クロノスロードにたずねるが、
返事はない。


その代わりに彼は上を指さした。


「上・・・・?あっちょっと・・・!」


ムジカはされるがままに、
クロノスロードに引っ張られていった。






そして運悪く
ムジカと入れ違いに、
リオナとマーシャが帰ってきた。


「ただいま。ムジカはいるか?」


《ムジカならどっかいったぁ!》
「はっ!?なんで!?」


するとルナが慌てて二人の元へくる。


「・・・ち・・・ちがくて・・・・私が悪いの・・・・・・・」


「いや、どうせB.B.がルナといたくてムジカを追い出したんだろ。」
《・・・・・》
「やっぱり・・・・・」


マーシャは呆れて
とりあえず一発B.B.をなぐる。


「てか・・・・・・いつでてった!?」


《え?ついさっき。》


「とにかく探すぞ。二人も手伝え。」


《なんで?》


「・・・・ムジカが狙われるかもしんないんだよバカウサギ!」


《まじかよ・・・!?》


四人は急いで部屋を出る。


《でも本当についさっき追い出したばっかなんだよ!だからまだここら辺にいるはずなのだ!》


とりあえずフロントの男に話を聞くことにした。


もし外に出てたら男が絶対に見ているはず。


「なぁオッサン。ここを16歳くらいの黄色い髪した女の子通んなかったか?俺たちのつれなんだけど。」


『いいや。通んなかったぜ?』


「・・・じゃあ中にいんのか?」


『ああ、そういやぁまだ小さいガキンチョもたぶんアンタらの探してるお嬢ちゃんを探してたよ。』


「・・・・小さい・・・ガキンチョ・・・・・・・?」


『髪が茶色くてクルクル天パだったな。』


「・・・・・!」
「まさか・・・」


リオナとマーシャは目を合わせ、
一気に階段を駆け上がっていった。










その頃ムジカは屋上にいた。


・・・さむい。


とりあえず風が冷たいので、
物陰に座ろうとした。


「・・・・・・・・・・隠れちゃダメだよ」


クロノスロードの鋭い発言に思わず固まる。


「・・い・・いや別に隠れようとだなんて・・・・・・」
「・・・・・・・・このゲームは・・・・僕の勝ちなんだから。」
「・・・・・・え?」


ゲームって・・・・・


よくリオナがシュナとしてたっていってたやつかな?


ムジカは色々考えてはみたが、
答えにつながるものがなかった。


「・・・・・・・・・・・・・」


すると誰かがこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。


クロノスロードはムジカの手をつかみ、
入り口から離れた。


「・・・・・・・・・・・・きた」


「・・・・・・・・・なにが?」


「・・・・・・・・・・・あんたを殺しに」


「・・・!?」


その瞬間、勢いよく扉が開かれた。


ムジカは思わず目をつむった。


「・・・ムジカここにいたのか!」


しかし来たのは敵ではなく
むしろ味方。


「・・・?みんな!」


ムジカはクロノスロードの手を振り払い、
リオナの後ろに隠れた。


「・・・・・・・・・・なんで!?」


クロノスロードはリオナとマーシャを見て、
驚きを隠せない。


「・・・なんで・・・・・・・生きてるの!」


「お前さんの仲間は退治させてもらったよ。それでもまだ悪魔狩りを続けるつもりか?」


「・・・・・・・・!!」


するとクロノスロードはポケットからナイフを取り出し、
ムジカめがけて走ってくる。


「・・・・・・・・死ね!」


ガンッ・・・カランカラン


しかしリオナが片手でナイフを振り落とし、
クロノスロードを捕まえた。


「・・・・コラ・・・・・いい加減に・・・」
「悪魔が・・・・・・・・僕にさわるなぁぁぁぁぁぁ!!!」
「!?」


急に耳に鐘のような音が響きわたった。


カランカラン......


このあたりには鐘などないはず。


するとその瞬間
クロノスロードの瞳は金色に輝いていた。











鐘の音はしばらく鳴り止まない。


しかし鳴り止んだ時にはすべてが変わっていた。


「・・な・・んだよこれ・・・」


空の雲は動きを止め、
自由に飛び回る鳥も羽を広げたまま。


「・・・・・・・マーシャ?!みんな・・・・!」


・・・なにがどうなっているんだ


マーシャもムジカもB.B.もルナも・・・・・


世界の"時"がとまった。


動きつづけているのは
リオナとクロノスロードだけ。


「お前・・・何をした・・・?」


驚きを隠せず、
リオナはクロノスロードに近づいた。


「・・・・・・・・・・・・なんであんたは動けるの!?」


しばらくリオナとクロノスロードは驚きで見つめ合う。


「っ・・・・!・・・・・・・確かに」


なんで俺だけ・・?


たまたまか・・・・?


するとリオナはズボンのポケットが急に熱くなるのを感じた。


手を入れ、
熱いもの確かめる。


・・・・・ローズソウルだ・・・


ローズソウルには効かないのか・・?


でもとりあえず今はこの状況をどうにかしなきゃ・・・・


「おい・・・・・どうやったら元に戻る?」


「わ・・・・わからない・・・」


「・・・・は・・・・?」


リオナは信じがたい言葉に唖然とする。


「こ・・・こんなことするつもりなかったんだ・・・だけど勝手に・・・」


クロノスロードは先ほどの強気とは一変し、
今にも泣き出しそうな顔をしている。


・・・・たく・・・・マーシャじゃないけど子供って面倒だな・・・


どうしようかな・・・・


・・・なんか当分動く様子ないし・・・


「おい・・・・」


リオナはクロノスロードの腕を引っ張り、
体の後ろで縛り上げた。


「な・・・!」
「・・・・逃げられたら困るからな。」
「・・・・・・・・。」


クロノスロードはやけに静かだ。


「・・・・?反抗しないの・・・」


「・・・・・・・だって・・・・アンタ悪魔じゃないもん」


「お前・・・・・・・・わかるのか?」


クロノスロードはコクンと頷く。


・・・・なんなんだよコイツの力は・・・・


「・・・・お前、時天大帝国の出身だろ?」


「・・・・・・・・・」


「・・・・生き残ったのか?」


「・・・・・・・・」


・・・・答える気がないのか・・・


どうしたものか。


リオナはどうしようもなく、
クロノスロードから少し離れたところに腰をおろした。


そして暫くして、
ようやく彼が口を開いた。


「・・・・・・そんな事聞かなくたって、僕があの力を使った時点でわかるでしょ?」


「・・・・。」


生意気なガキ・・・・


しかしリオナの沸点はマーシャと違って低くないため、
リオナは気に留めずに話しかける。


「こんなこと聞くのもあれだけど・・・・なんで生き残れたんだ・・・?しかも壊滅したのは十年以上前だ・・・・本当ならこんな小さい子供の"時使い"がいるはずない。」


するとクロノスロードは口元をひきつらせ
リオナを睨みつけた。


「・・・・・・・・・・・・悪魔の仲間のアンタがなんでそれを聞く?」


「・・・・?」


「・・・・悪魔が僕の・・・・国を壊したくせに・・・・」


なにを・・・・言ってるんだ・・・?


だってすべての原因は・・・・


「・・・フェイターが壊滅させたんだ。悪魔のせいじゃ・・・」
「悪魔もいたよ」


クロノスロードの声がはっきりする。


「僕はこの目で見たよ。フェイターに紛れていたあれは悪魔だった。」


「は?絶対ありえない。フェイターとダークホームは天敵だぞ?」


「でも・・・・僕はみたんだ!!フェイターの中に一人だけ悪魔がいた!!悪魔の波動が見えたんだ!!」


「波動・・・・?なんで?なんで見えるんだよ」


「そ・・・・それは言いたくない・・・・」


クロノスロードはリオナの気迫に押されながらも、
一歩も譲る気はないらしい。


「・・・悪魔が・・・・僕の家族や・・・国を殺したんだ・・・・だから今度は僕が悪魔を殺してやるんだ・・・・!!!」


思い切り睨みつけてくるクロノスロードに
リオナは冷たい目を向ける



・・・・・・・・悪魔の契約者がフェイターと・・・?


ありえない・・・・だって俺の国だってフェイターにやられたんだ・・・・絶対ありえない



「・・・でたらめ言うな・・・俺は信じない」


「・・・・・・・あっそう!いいよ別にっ・・・!!」


クロノスロードはリオナから顔を逸らし、
その場に座った。


リオナも頭にきて、
クロノスロードに背を向けた。


・・・・ありえない・・・ありえないありえないありえない・・・・


そんなこと・・・あっていいわけない・・・・







混乱する頭で
しばらく空を見つめていると、
ゆっくりと雲が動き出す。


風も流れはじめ、
頬をなでる。


時が再び動き出したのだ。


「・・・・・・やっとか」


リオナはやっと動き出したマーシャたちに近づく。


するとマーシャはクロノスロードをみて少し驚いた表情をみせた。


「あれ?いつのまにガキ縛ったんだよ。早業だな。」


「ちがうよ・・・今まで時がとまってたんだ。」


「は?何言ってんだよ。ついいまガキが叫んでたろうが。」


リオナはため息をつきながらも、
今起きた状況について説明した。





「じゃあお前とそのガキだけが動けてたのか?」


「・・・・ああ。おそらく俺はローズソウルのせいだな。」


「・・・・何か変な感じね・・・・・・」


・・・・ほんとだよ・・・・信じられないよ・・・・いろんな意味で・・・


するとマーシャは突然
リオナの顔をじっと見つめてきた。


「リオナなんかあったのか?お前顔色悪いぞ?」


マーシャはリオナの顔をがっしりつかむ。


少し恥ずかしくって、
目線をそらしてしまう。


「だ・・大丈夫だ・・・・」


「ホントか?・・・なんか怪しいなぁ〜」


マーシャはいやらしくニヤリとしながらも
リオナの頭をくしゃくしゃっとなでた。


「とにかく、この"時使い"のガキをどうするかだ。」


「でも・・・ここで逃がすのはまずいんじゃないか?敵に回したら確実にやられる。」


「だよなぁ。時を止められてその間にグサリとやられちゃ気づいたときにはあの世だ。しかも世界で唯一の生き残りだし。こんなところで死なれても困る。」


「・・・・とりあえず連れて」
「・・・・・やだ!」


突然声を張り上げたクロノスロード。


「・・・・僕は悪魔なんかと一緒に行きたくない!!」


・・・・・・このクソガキが。


リオナは思いっきりクロノスロードを睨みつける。


「・・・・・・・・・・・・だってさマーシャ。どうする。」


「そりゃとりあえず」


マーシャはクロノスロードの首襟をつかむ。


「強制連行といきますか。」
「・・・な!・・・・・ぁぐっ・・・!!!」


マーシャはクロノスロードの首を思いっきりたたき、
気絶させた。


もちろんクロノスロードはびくともしない。


その光景に、
ムジカは口元を手で覆った。


「なんか・・・・・かわいそう。」


「そう言うなムジカ。コイツのためだ。」


マーシャは軽々クロノスロードを担ぎ上げた。


「そういやぁリオナ。コイツからなんか聞いたか?」


「え・・・あ・・・いや特に・・・。」


「・・・?本当か?」


「本当だって・・・・ああまった。コイツ、悪魔の波動が見えるらしい。」


「なんでだよ。」


「それが黙秘したままでさ・・・しかも時を止める力の使い方をわかってないらしい・・・」


「は?じゃあ感情まかせかよ。」


面倒だな、とマーシャがつぶやくと、
後ろにいたルナがふと疑問をこぼした。


「・・・・でも・・・この子が時天大帝国の生き残りなら・・・年齢的におかしいわよね・・・・・」


「・・・それも黙秘された。」


「・・・・。」


とにかく謎が多すぎる。


それでも天然記念物的存在であることは間違いないから大切に扱わなければ。














その日の夜のことだった。


最近すっかりなれてしまった雑魚寝で
疲れた体を横にしていたリオナ。


隣で寝ているマーシャからは寝息が聞こえてくる。


ムジカとルナは2人で一つのベッドで寝ているが、
ムジカの寝相の悪さにルナは少々苦しそうにうなされている。


クロノスロードはというと、
あれから一度も目を覚まさない。


ちょっといい気味だとも思ったが
内心マーシャはやりすぎだと思う。


・・・・・はぁ、眠れない・・・・


リオナは枕代わりのB.B.を抱きしめながら、
何度も寝返りをうつ。


が、どうしても頭からあのクロノスロードの言葉が離れず、眠ることができない。


・・・・悪魔がフェイターと・・・・


だから・・・ありえないってば・・・・


・・・・でも・・・・・もし本当なら・・・


あの中に・・・ダークホームに裏切り者がいたってことだ・・・・・


考えたくもないことを頭に浮かべながら、
リオナは無理矢理寝ようと目をつむる。




すると急に辺りが真っ白に染まった。


真っ白い部屋に真っ白家具


すべてが真っ白の世界


これは・・・・すごく久しぶりだ・・・・・


もう最後に見たのは何年前だろうか・・・


リオナは足を進め、
中央にあるソファーに腰をかけた。


"リオナだぁ!!リオナが来てくれたぁ!!"


「・・・!?」


いつの間にか隣にいた
懐かしい、顔の見えない少年に、
リオナは戸惑いながら笑いかける。


「お前・・・成長しないんだな。」


"僕の時はあの時から止まったままだから"


「あの時・・・・?」


"え!?もしかして知りたくなった!?"


少年は嬉しそうにリオナに抱きついてくる。


「い・・・いや知らなくていい・・・・」


だってコイツの手を取れば
"俺"が保てなくなるから・・・


"ふーん。つまんないの"


「・・・・悪いな。」


"・・・ねぇリオナ?"


「・・・・・・?」


"あの時使いの男の子、正直者だねぇ。"


「・・・・・は?」


"あの子、かわいそうだね。本当の事なのにだーれにも信じてもらえないんだ。あははっ"


「あのガキの言ってることが・・・・本当だって言うのか・・・?」


"別にそうじゃないけど、全否定するリオナの考えがわからないの。"


「ほっといてくれ・・・・!」


リオナはソファーから立ち上がり、
無我夢中に走り出す。


"・・・リオナ。早く気づいてよ・・・・"


少年のため息まじりの呟きが耳に焼き付いた。









「・・・・うぁ!」


夢から覚め
リオナは思わず飛び起きてしまった。


《・・・!!なんだよリオナ!!》


時刻はまだ夜中の1時


「ご・・・めん・・・ちょっと変な夢見ただけ・・・」


《もぉ〜・・・オイラあっちでねちゃうぞ!?》


「だから悪かったって・・・・イイ枕なんだからさ。」
《抱き枕だけどな》


リオナは再びB.B.を引き寄せて布団にはいる。


・・・・早く気づけって・・・・なんだよ・・・・・


リオナはますます頭を悩ませながら、
薄汚れた天井を見つめていた。





















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