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【完結】 Novel〜Lord's Soul〜
story38 ファストライン



やっと三日がたった。


今まで生きてきた中でこんなにも三日が長く感じたことはない。


早くこんな薄暗い町をぬけて
太陽の見えるところへ行きたい。






リオナ達は朝一番の便に乗るため
すでにターミナルに向けて出発していた。


ムジカはもうすっかりなれたのか、
翼を違和感なく隠すことができるようになったらしい。


「ふぅ、ひと安心だね。」


「・・よかったな。」


すると視界に、昨日戦場となった広場が目に入る。


リオナはなんとなくあの悪魔狩りが気になって、
広場に駆け足で向かった。


「・・・・あれ。いない」


広場のどこを見ても男の姿は見えない。


「アイツならおそらく病院だ。」


「・・病院?」


「俺が医者呼んでおいた。」


「いつのまに?」


「まぁ、いつだっていいじゃねぇかよ。」


マーシャは顔を逸らしながら先を歩いていった。


マーシャはなんだかんだ情が厚い男だ。


いつもそうならいいんだけどな・・・



「・・・・・ん・・・ぁ・・」


するとマーシャの背中にいたクロノスロードが一日ぶりに目を覚ました。


「おっ。起きたか。」


「・・・・・ぁ・・・れ?・・・あ!!!は・・・離して・・・!!ってイッッッッタ・・・・・」


「あんまり動かない方がいいぜ?なんせ俺の鉄拳を喰らったんだからな。」


「・・・・・・・・・ぅっ!」


クロノスロードは仕方なく、
マーシャの背中にしがみつく。


「あのよぉお前さ・・・・・まぁ・・・いいや。」


本当はマーシャはクロノスロードに色々聞きたかったのだろう。


けれど聞いたところで話しはしないだろうと判断したらしい。


確かに今のクロノスロードにいくら何を言ったって口を割らないだろう。




「空・・・・・・晴れないかな」


ムジカは曇天を見上げながら
小さくため息をつく。


「・・・空を飛んで雲をかっ切れば?」


「そんなことできないよ・・・」


「・・・・冗談だって」


「でも・・・これも空なんだよね。」


「・・ああ。こういうどんよりした空があればすっきりした空もある。」


「なんかヒトみたいだね」


「ヒト・・?」


「元気な人がいれば暗い人もいるでしょ?」


「じゃあ・・・俺は?」


「リオナは・・・・・・・・・・・・・・優しい人、だよ?」


「今の間は何・・・」


「ごめん・・・」


「別にいいけど・・」





突き当たりの角を曲がると、
巨大なターミナルが目に入る。


町の殺風景から一変して近代的な造りだ。


ターミナルが近づくにつれて、
心も跳ね上がる。


「・・・・・・・まって!」


「あ?」


クロノスロードはマーシャの肩をたたいた。


「なんだよ?」


「・・・あいつらだ」


クロノスロードは指を指す。


するとターミナルのエントランス前には見覚えのある車。


カラの檻と台車、そして先日クロノスロードに時を止められた男たちだ。


「・・・・・・また捕まる」


「あ?大丈夫だって。てかそもそもなんで捕まったんだよ。」


「・・・・・・・・・・・・・・ぼぅっとしてた」


「案外ドジだな。」


「なっ・・・・・・・・ぁちょっとまって・・・・」


マーシャはクロノスロードを無視して普通に足を進める。


エントランス前までくると
男たちはじろじろとリオナたちを見てきた。


『あ!!!このガキだ!!!』


『てめぇらこのガキは俺たちの獲物だ!!』


どうやら男たちはクロノスロードを捕まえるために待ち伏せをしていたようだ。


「悪いがコイツは俺たちの連れでね。」


『は!?ふざけんな!!俺たちの金がコイツのせいで全部パーになったんだぞ!?』


男たちは鼻息を荒くしてマーシャに顔を近づける。


「それは悪かった。」


『悪かったですむか!!』


すると男は突然ナイフを出し、
振り上げた。


「あらら。危ない。」


マーシャはクロノスロードを背負ったまま、地を蹴り上げ、
男たちの背後に回った。


後ろから蹴り飛ばそうとした瞬間。


カランカラン・・!!


『うぁああぁぁ!』


いつのまにか男たちは遠くまで吹き飛ばされていた。


マーシャが蹴り上げる前に、ムジカが先手を打っていたのだ。


「ナイスムジカ。」


「ふぅ・・・びっくりした・・・」


「・・ていうかムジカ・・俺の命令なしで力使えてるよ!」


いつもならリオナの命令がなければ力が使えないのだが。


「ほ・・・ほんとだ・・・・」


ムジカは顔を青くしながら、
その場に座り込んでしまった。


・・・まだ戦い慣れをしていないからな


リオナはムジカに肩を貸し
立ち上がらせる。


「ほんじゃ、行きますか」


平然とターミナルに入って行くリオナたちに、
クロノスロードは慌ててマーシャの髪を引っ張った。


「痛い痛い。いやマジで痛いから離して痛い。」


「・・・・・・・・・え・・あ・・・ぼ・・・僕どこに行くの・・!?」


「そうだなぁ・・・とりあえず俺たちと付いてきてもらって誰かいい奴に預ける。」


「・・・・・・・」


「なんだよ。反発しないのか?」


「・・・・・・・悪魔から離れられるならそれくらい我慢する」


「ハイハイ。でもまぁそんなに毛嫌いしなさんな。」


エントランスに入ると、
すでに巨大な"ファストライン"が待ちかまえていた。


『おはようございます。何名様でしょうか。』


「えーと少年少女三人と大人一人、あとガキンチョ一人。あああのウサギはペットです。」
《・・!!オイラも少年・・》
「・・バカ!!静かにしろ・・・!!」
「ってことで五枚よろしく。」
『か・・・かしこまりました。』


リオナたちはチケットを買い、
中へ入っていく。



「・・・・・・・・・・・・すごい」


クロノスロードは高い天井を動き回る機械に驚いた。


「・・・なんか発達してるんだかしていないんだかわからないな・・・」


「・・・・・・そうね・・・・・・・・・」


「あっ・・・でもルナ、世界は全部がこんな国ばっかなわけじゃないよ?ココがこんなんなだけであって・・・」


リオナは必死に弁解する。


「・・ふふ・・・!そうね・・・楽しみだなぁ・・・・・」


「・・ああ」


目の見えている間に・・・・目が見えなくなってしまう前に・・・
・・・もっと綺麗な景色を見せてあげたいんだ・・・



リオナたちはUW(Unknown World)行きのファストラインに乗り込んだ。


中は個室が何部屋も連なり、
まるで動くアパートのようだ。


リオナたちの部屋は人数が多いためにかなり広々としている。


《オイラ窓際とーりっぴ!》
「あ・・・そういえばさ・・・」
《ってオイラを無視すんなぁ!!》
「・・・だって別にどこでもいいし」
《は!?夢なくない!?》
「・・・引きちぎるぞ・・・」


「・・・・・・・・・・。」


二人の喧嘩にクロノスロードは目を丸くする。


「・・・・・・どうしたの・・・・・・・・?」


ルナが優しく話しかけると、
クロノスロードは少し悲しげに首を横に振った。


「兄弟喧嘩・・・・・・・・・見るの初めて・・・」
「きょ、兄弟・・だと?・・・・ペットと飼い主だ!!」


どう見たらウサギとリオナが兄弟に見えるのかと、
リオナはフンッと鼻を鳴らして顔をそらしてしまった。


するとやっとのことでファストラインが動き出す。


だんだんとスピードをまし、
ついに暗い空も青空へと移り変わっていった。


まだ幼いクロノスロードは、
初めて見るもの全てに目を輝かせていた。


「・・・・・・・・・・キレー」


「お前、名前は?」


「・・・・・・・・・・・」


しかしまだ口をきく気にはならないらしい。


「チッ。ルナ頼んだ」


唯一悪魔関係者ではないルナがクロノスロードに話しかける。


「君・・・・・・・名前は・・・?」


「・・・・・・・・・・・・・・クロノスロード」


すると突然マーシャは椅子から立ち上がり、
クロノスロードに顔を近づけた。


「それ、本名か?」


「・・・・・・え・・・あ・・・・・初めはロードだったけど・・」


「まじかよ」


「・・なにがどうしたんだよ。知り合いか?」


「いや・・・クロノスって名前が付くやつは"時"の管理者トップ、いわゆる国王的な存在なんだよ!」


「・・・・・・はぁ!?」


リオナ達は驚いてクロノスロードを見つめるが、
それを聞いた本人が一番びっくりしたようだ。


「お前・・・・・・知らなかったのか?」


「・・・・・・・・だって・・・王さまは・・・パパだもん・・」


「なるほどな。お前、あの事件が起きた日にオヤジから何か言われただろう。」


「・・・・・・・・・・・・時を・・あずけるって・・・」


「やっぱり・・。」


「ねぇ・・・どーゆーこと?」


ムジカは首を傾げる。


「こいつは時天大帝国の王の息子だったんだ。でもあの事件の日にコイツだけでも逃がそうとしたのかコイツのオヤジが"大いなる時の力"をこいつに渡したんだろう。んでその力を引き継ぐものは代々時の神、クロノスの名を名乗るんだ。だからクロノスロードってわけ。」


「へぇ・・・すごい名前なんだなぁ・・・って、王子様?!」


「今更かよ。」


「・・・・だって時の神だろ?下手すれば世界が動く!」


「まぁ大丈夫だって。まだこんなガキだ。しかも時の使い方もわかっちゃいない。」


「でも・・・・・・コイツどうするんだ?誰かに預けるってそんないい人いる?」


リオナのいう事に、
マーシャは少し考え込んだ。


「・・・・うーん。あっ、フォルトとかは?」


「・・・・フォルトさん?懐かしいな・・・元気かな。」


聞き慣れない名前に、
ムジカは再度首を傾げる。


「フォルトさんって・・?」


「・・十年前ミュージックカウンティーでの任務でお世話になった人だ。」


「正確に言うとお世話した人だ。」


「・・・マーシャは世話かけた人だろ」


「そーでした」


十年前、ミュージックカウンティーでマーシャはリオナを守るために一度自ら仮死状態になり、誰もが死んだものだと思っていた。
しかしそのあとすぐにリオナ達ダークホームメンバーはマーシャの生存を確認したのだが、フォルトはそのことをしらなかった。
だからマーシャの生存を知らせるついでに、
フォルトとの約束通り翌年の音楽祭に行ったのだ。


それ以来何回か休みがあれば行ってはいたが、
最近は忙しく、ここ数年は会っていない。



「フォルトにも会いたいしな。どうだ?」


「・・・・うん。でも・・・フォルトさんと、コイツに聞いてみないと。」


そう言ってリオナはクロノスロードをちらっと見る。


「・・・・・・・・・・・・・・・別に。」


「だってさ。じゃあ後で手紙出しとく。で、ついでにお前の名前は今日からクロードだ。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・クロード?」


「クロノスなんて名乗ったら命をねらわれかねない。お前今の自分の状況わかってるか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・少し」


《なぁクロードは結局悪魔狩りの一味なのか?》


「・・・・・・・・・・・・・・・・・ううん。僕はたまたまあの男に誘われただけ。」


「てかなんであの町に?」


「・・・・・・・・・・・・・国が襲われたあの日のあと・・・気がついたらあそこにいた。」


「あれから10年も?」


「・・・・・・・・・・・・10年?そんなにたったんだ。」


クロノスロードは少し悲しげに窓の外を見る。




なぜ体が小さいのか、
そして・・・・悪魔がフェイターに手を貸していたことなどまだまだ問題は山積みだが、



とりあえず少しはクロノスロードの事を知ることができた。













ターミナル103をでてからだいぶたった。


クロードやムジカはすっかり眠ってしまい、
リオナも睡眠体制をとったところだった。


その時、
突然物凄い揺れが生じ、
リオナたちは驚いて飛び起きた。


「怖い・・・なに・・・?」


ムジカは体をふるわせながらリオナにしがみつく。


「大丈夫だから・・・」


そのまま揺れは止まったが、
電気はバチッと消えてしまった。


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」


リオナとマーシャは目を合わせ、
厄介なことになったと
これから起こるであろう事に
ため息をついた。















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