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お試し箱

私に新たな生を与えて下さった母親は、
どうやら良い所の出らしく
乳母に私をまかせてばかりでした。

いくら外見が赤子でも
中身は、17歳の娘です。
ぐずる事もなければ、夜泣きもありませんでした。

それを怪しく思ったのか
それとも怖くなったのか
母が私を見る目は、とても冷たい目でした。

最初は愛しいと言い愛してくださったのに。

母の影響か周りの人達も
私を気味悪がりました。
まるで物の怪の様だと、人形の様だと。
他の赤子と違い怖いと。

私の見方は、母の代わりに
私を育ててくれている乳母と
天井に潜んでいる無口な忍だけでしょう。

あの緋色の髪が綺麗な忍は、
私が怪しい事をしたら即刻殺すため
母がお金で雇った忍でした。

そんな娘に同情したのか、はたまた好奇心か
殺すかもしれない対象に姿を見せてならない、
その掟を破り彼は、私の前に現れました。


彼は、いつでもどこでも無口でした。
だから話せないと思い。
私ばかりが話していました。
と、言っても私は、まだ赤子。
話すという事もままなりません。
「あー」とか「うー」しか話せません。

でも忍は、私の言いたい事が
わかっている様でした。

忍は、話しません。
私は、話せません。
でも伝えたい事は、伝わります。

それから私は、忍を紅葉と名づけました。
その名は、まだ呼べませんけれども。

掟を破り、私の前に姿を現した忍。
紅葉になら殺されても良いと思いました。


1歳の春。

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あきゅろす。
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