仲間05
「私はコウ、こちらこそ」
元気良く返事をしたリナを見て、何故かマリアさんを思い出す。一生懸命なところが似ているからだろう。
リナは笑顔を絶やさない。
「私、本試験は2回目なんです」
「ああ、もう受けてたの?」
「はい、前回に」
「へぇ」
つまり、彼女は去年試験に落ちたということだ。何処と無く話し難い雰囲気が漂っていたが、コウは気にせず続けた。
「どんな感じだった? 本試験」
リナは古い記憶を手繰ると、率直な感想を述べた。
「そうですね……恐かったです。二次試験なんて恐ろしくて目も開けられませんでしたわ」
コウは絶句した。そんなことで大丈夫なのだろうか。そう言いたい気持ちを必死で抑える。
「ま、まあ……本試験って言う位だし、きっと難しいんだよね?」
仕方がないので苦し紛れにフォローらしきものを加える。だがリナは変わらず穏やかな微笑みを返してきた。
大丈夫だろうかと、心配になるのは当然だろう。
「リナは何が得意?」
「はい! 私は料理が大好きで……あと、洋服を作ったりもします」
「――」
コウは無言で頭をかかえる。正直マリアさんを相手にしてるより辛かった。
気を取り直してもう一度挑戦する。
「ええと、リナの能力はどういうものなのかな?」
「能力……あ! ごめんなさい! 私勘違いを」
「いいのよ、リナの趣味も聞けてよかったわ」
「コウさん……」
リナの目は赤くなっていく。もしかして泣いてしまうのかと思い、コウは心中で焦る。
弁解しようとした時、背後からやる気のなさそうな太い声がした。
「おいおいお前らそんなんで大丈夫かぁ?」
それは誰かが自分の心の声を代わりに言ってくれた、と言っても過言ではない。ただし「お前ら」と、ひとくくりにされた事は聞き捨てならない。
コウは目を鋭くさせながら振り返った。
「誰よ、あんた」
その男は「おお恐っ」とふざた声を出す。いかにもチャラチャラした、加えて筋肉バカっぽい男だ。こういう奴は何をしても腹が立つ。
「おれはケイン=レセプト、お前らと同じチームだぜ」
やはり、とコウは項垂れた。直感は見事大当たり。彼、ケイン=レセプトが今回の試験の仲間なのである。
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