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〜龍と刀〜
『御門流』読心術
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ここは『御門流』本拠地、他の流派と同じ武家屋敷。ただ他と全く違う部分がある。日の光の入らない、地下に作られた防音防熱の加工をされた巨大な、しかし何もない部屋。
尋問室だ。

「ここは……?」

「ようやく目を覚ましたか。それでは始めるぞ、火を灯せ」

幸輔の祖父の合図と共に、ロウソクに明かりが灯された。

「まずは名前を聞かせてもらうぞ?」

「……誰が、話すか」

「幸輔、頼む」

目の前に呼ばれた幸輔が立ち、同じ質問を黒に投げる。
もちろん帰って来るのは沈黙だが、幸輔が欲しい物は手に入った。

「君の名前はオーブル、だね〜?」

「……!?」

「そりゃあ驚くよね?何もしないで名前が分かるだなんてさ〜。ま、手の内を晒すつもりは無いけどね」

幸輔はただ、オーブルの前に立っているだけ。
細い目をいつもより若干開いて目を見ている。たったそれだけなのに、名前が分かるのだ。

「ホントはこういう裏方に回りたかったんだけどね〜?ほら、ボクって特別強いって言う訳でも無いし−−」

「無駄話は要らぬぞ幸輔。それに、我が流派は血縁のみでの頭首引き継ぎを行っているのだ。お前が前に出ないなど有り得ない」

「分かってるんだけどね〜?」

「ならさっさと情報を集めるんだな。それを協会に報告せねばならぬ」

渋々といった感じで再びオーブルに向かい合う。別に魔法陣を展開させている訳でも無ければ、何らかの道具を使っている訳でもない。
そう、これこそが『御門流』読心術。相手の思考を泥沼に落とし、内側にある本音を覗く。
この尋問室自体が大きな魔法陣として作られており、ロウソクや捕らえた者の位置、数、負傷の具合などによって発動する効力が違うのだ。
例えば、魔力が充満した状態なら複数人で相手の心の中を読む事が出来るため、真実を見極められる。仲間内の裏切りにも有効な手だて。

「さあて、オーブルさん〜。君たち『永遠の闇』が一体何をしようとしているのか……嫌でも吐いてもらうよ〜」

そして、何故頭首である祖父ではなく、幸輔が読心術を行っているのか。
理由は簡単。幸輔がこういう裏仕事に一番長けているからだ。

「……」

「あ〜自爆なんてしない方が身のためだよ〜?そんな事したってボクらを巻き込めないようにしてあるんだからさ〜」

「っ……」

「君、無口な割に考えてる事はたくさんあるんだね〜。それだけ頭が回るって事なんだろうけど……じっちゃん、これは時間が掛かりそうだよ〜」

頭を掻き、祖父へと視線を向ける。一瞬だけ顔をしかめたが、すぐに頷く。これは時間掛かってでも終わらせろ、という意味だろう。

「はぁ〜。仕方ないかな〜?こっちのが得意だし……それじゃ、オーブルさん。これから君たちの事実を知るために、心の奥底まで覗かせてもらうよ」

僅かに開かれた緑の瞳に映るのはロウソクの明かりだけだが、それがどこかオーブルの身に冷たさを感じさせた。

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