〜龍と刀〜
三色の暴徒U
「一体、どこから……だよ!」
「……索敵中、話しかけるな」
「仲間内で喧嘩している場合じゃないぜ?アンタはまず、腕の回復に勤めな。それまで俺が時間稼ぐからよ」
「言われなくても……何故お前が仕切ってるかは知らないけどな!」
腕を失った赤をかばうように黄色が魔術の詠唱を開始。黒は少し離れた位置で幸輔と祖父の居場所を探っているみたいだが、掴めない。
そんな簡単にバレてしまっては、忍者の名が廃る。
それに、これが本来の『御門流』の戦い方。隠密を主とし、常に気取られない事。今までの幸輔の戦いはやむを得ず前線に出ていただけ。
今は夜であるという事、場所がビルの密集した土地であるという事。それも相まって隠密というのは最大の力を発揮出来るのだ。
結界の中は自由に動き回れる、魔術を使える。これで勝てない敵など、居ないに等しい。
「まだか!?索敵は!」
「……ダメだ。僕の探索網に引っ掛からない。掛かってもすぐ消える」
「かと言って俺にここ一体をやる魔術は無いしな……今まで集めた分を使ってでも−−」
途切れる言葉。ぐらつく視界。急に左足の感覚を失い、そのまま倒れてしまう黄色。
「魔力を集めてたんだ〜?ちなみに、それは何に使うのかな?教えて欲しいんだけどな〜」
声、そして空を切り裂く音。あくまでも殺さずに情報を奪うつもりなのだろう。
ここまで確実に体のパーツを壊す事が出来ているのだ。トドメを刺すのも造作がないはず。
それなのに実行しないという事は、幸輔たちの目的が情報収集だと決め付けても間違いは無いはずだ。
「っ……こそこそしてないで出て来いよ!それともお前らは戦うのが怖いのかっ!!」
赤が悲痛な叫びを上げるが、その声は容赦なく潰される。
「力がある者は消えて貰わなければならぬからな……許せ」
「ぁ」
一瞬の煌めき。
同時に赤の額を貫いたのは一本の忍者が使うクナイ。貫通し、クナイは地面に刺さる。残ったのは薄っぺらい赤いローブ一枚のみ。
「くっそぉぉ!こうなったら俺の魔術で!」
「……それは、上策とは言えない。脱出の方法を考えるのが先」
「仲間がやられたのを黙って見過ごせっていうのか!てめぇは!」
黄色は黒の胸倉を思い切り掴み上げるが、そこまでだ。足が無いために、バランスを崩してしまう。
「……仲間と言えど、所詮僕たちは別の土地で生まれた、違う種族なんだ。相容れる事は……難しい。それに、戦いに感情は皆無。要るのは非情さと冷酷さ。アスラ様のような」
突き付けられる現実。
自分の目的に似ているため、仲間は見捨てられない。だが、実現すればこんな思いをする必要もないのだ。
そう割り切って頭を動かした。
「確かにそうだけどさ〜?時には仲間を助けるっていう優しさだって必要だと、ボクは思うね〜」
その思考の切り替えは虚しくも真っ二つに裂かれてしまう。文字通り、体ごと真っ二つに。
「終わりだな……幸輔、捕縛の陣を張る。手伝え」
「あいよ〜」
黒いローブを纏った者は全く動かず、その行動を見守った。
最初から抵抗する気は無かったのだろうか。
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