夕陰草
結びとどめ10
精も根も尽き果てるまで抱かれた要は、空の白みはじめた頃にようやく大貫から解放されて、気を失うように眠りに落ちた。
泥のように眠っていたと思っていたけれど、目が覚めたのはまだ朝の9時を回った頃だった。
ぼんやりと部屋の様子をうかがって、あぁ大貫の部屋に来たんだと、胸が少しだけ暖かくなる。
後ろから大貫のたくましい腕が腰を抱いていた。もぞもぞと寝返りを打とうとして動いた瞬間、身体中に熱くなるような疼きと痺れを感じて知らずに身体が戦慄く。

「……ぁ」

なんとも形容しがたい感覚に小さく声が漏れてしまう。その声に反応したのか要の動きに反応したのか、大貫が眠そうに呟いた。

「んー……動けないでしょー? まだ寝てなさい」

腰に回された腕に力が入りぐっと抱き寄せられると、大貫は要のうなじに顔を埋めるようにして、またスーッと眠りに落ちたようだった。

「…………」

こんな風に扱われるのははじめてだったりする要は、それだけで死にたくなるような幸せを感じていたが、大貫の呼吸が首筋に当たっていて、それがダイレクトに伝わり戦慄く身体に別の疼きをもたらし始める。散々弄ばれた身体はそんな小さな事にも反応して要は泣きそうになりながら息を殺して耐えるしかなかった。
規則正しくかかる息にぞくぞくと震え、硬くなっていくそれに手を伸ばそうとすると、ペロリと首筋を舐め上げられて、思わず甘い声が漏れてしまった。

「……んぁっ」
「なーにしてんの? 」

大貫は体勢を変えるとベッドに縫い止めるようにして覆い被さってきた。欲に震える身体はピンク色に染まっていて、そんな状態を見下ろされている羞恥に要は思わず顔を反らした。

「あーそういう感じ、めちゃそそるわー。ね、もういっかいシていい? 」
「え? あの……」
「だって要も良い感じに臨戦体勢入ってるし、そのままじゃ逆に辛いでしょー? 」

大貫は乳首をペロリと舐めて要を見上げてくる。

「ぁ……」
「それに、今自分でシようとしてたの見てたし」
「……そ、それは」
「なーんて。そんな無茶しないよ。昨日ってか今朝は本気泣きさせちゃったし。ごめんね、俺要の泣き顔で変なスイッチ入って全然気づかってやれなかったのに」
「……昭斗」

要は大貫の言葉にすんっと鼻をならした。暖かい腕に抱かれて、暖かい言葉をくれる。普通の恋人のような扱いに要は不馴れでどうして良いかわからない。それでも大貫に抱きつきたいと思っな要は怠く重い腕をしっかりと大貫の首に回した。
大貫は要のしたいようにさせて、押し潰さないよう気を配りながら要を強く抱き込んだ。

「昭斗……」
「うん。身体、辛い? 」
「ちょっと、ね。」
「ごめんね。明日からはもう少し自制できるように頑張る」
「……でも昭斗がくれたものだから、この怠さも悪くない」

自分で言って恥ずかしさにグリグリと大貫の胸に頭を埋めると、大貫が要の髪にくちずけを落とした。

「要って、まじ今までにないタイプだ」
「……えっと、ごめ……ん? 」
「謝るとこじゃないでしょー? 」

クスクスと笑う大貫につられて要もふふっと笑うと、笑いの振動が身体に響いてしまって要は大貫に抱きついたまま身悶えた。

「可愛い、要。絶対、離さないからね」
「うん。うん」

どうして、大貫はこんなに暖かいんだろう。
どうして、大貫はこんなに優しいんだろう。
欲しい言葉をくれる。
まだまだ知らないことも多いけれど、それはこれから知っていくことだし大貫となら恐くない。
ちゃんと、付き合って行けると思う。

「要、もう少し寝よ。そしたら亜とで晩御飯の買い物に行こうね」
「うん! 」




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あきゅろす。
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