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ショート
始まり(平志)
工藤が元の姿に戻った。
それを見届け、彼の検査を一通り終わらせて解毒剤が成功だったと思われた頃、工藤を診ているのが子供と知れたら問題になる為、後々を考えて灰原も同じ薬を飲んだ。
灰原哀として最後になる挨拶が必要な人間達には、アメリカに渡るという理由を持ってその前に手を打った為、工藤の親友である平次にも彼女が戻る情報が入ったのだった。
そして工藤と共に、戻った彼女を迎えたのだ。

その時彼女に「何故貴方まで?」と訊かれて、「工藤と一生付き合いやもん、ねーちゃんもそーやんか♪」なんて明るく言ってのけたら、呆れた様な照れた様な表情をされた。


そして大阪に戻った平次が何となく物憂げにしているものだから、らしくないと友人達に相当揶揄われた。
そんな彼を女の勘なのか、幼馴染みの和葉が訝しんで見ていたのを、平次は気付く余裕もなかった。

ある時、幼馴染みの気安さで抱きついてきた彼女(本人にとっては気安いなんてものではなかったろうが)を、平次は咄嗟に離した。
「いつまでもコドモみたいやな、おまえはー」
そんな風に冗談っぽくやんわりと突き放す。
「なんやてー?!」と次から次へとポンポン怒鳴ってくる和葉の文句に応じながらも、彼の頭に浮かんだのは、大人に戻って女性らしい姿になったクールビューティー……宮野志保と名前も戻った彼女だった。



誰にも邪魔されず、一人で歩く平次は溜め息をついた。

(………あかん、オレ……マジやろか……)

気に入っていないと言ったら嘘になる。
灰原だった時から工藤同様、一目置いていたのだ。
けれど元に戻って更に美しくなった彼女が頭から離れない。
こんな事は初めてだった。

どう考えても一筋縄ではいかない相手だ、腹を据えて時間を掛けても叶う相手かどうか。



不意に目の前に桜の花びらが舞い落ちてきた。
自然と上を眺めたら、彼女に似合いそうな淡いピンクがやさしい風に僅かに揺れている。
それを暫く眺めていて、平次は覚悟を決めた。

やってみもしないで諦めるなんて、服部平次じゃない。
浪速男の心意気、彼女を自分の側で笑顔にしてやりたい!




そうして何かと理由をつけて阿笠邸に顔を出す様になった平次に、呆れながらも志保の気持ちが少しずつ変わっていくのは、それからの話になる。




───────おしまい。

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