main Don't go back 8 その日の夜、館へやって来たのはシャープールではなかった。 俺の部下であったウィリアルス、アデルが寄越した俺の帰国のための人間だ。 ほんとうに信頼できる人間なんてほとんどいなかった帝国で、ウィリアルスは腹心の一人だった。 「ヴァレリアヌス様、よくぞご無事で」 「お前もな。お前は捕虜にならずに済んだんだな」 「はい、私が陣を構えていた所まで、敵は侵入しなかったので」 ウィリアルスは、さぁ行きましょう、と言うように俺の手を引き、俺たちは館を出た。 「ウィリアルス」 「どうしました?ヴァレリアヌス様」 「俺は、帰ってもいいのだろうか」 するとウィリアルスは、青色の目を少し見開く。 「どうしてそのようなことをおっしゃるのですか?私たちはあなたの帰りを心待ちにしております」 まだ、王宮の庭だから、二人して小声で会話をする。 「でも、敵に捕まるような馬鹿な皇帝はもう、お払い箱のはずだ」 「そんなことはありません。...たとえ、そうだとしても」 「私があなたを、愛しますとでも言うつもりか?」 突然、俺たちの背後から、あの聞きなれた愛しい声が聞こえたかと思うと、俺の体は後ろから伸びてきた腕に掴まれ持ち上げられる。 「っシャープール!」 ウィリアルスが忌々しそうに、俺の背後を睨み付ける。そこには、俺が今まで見たことのない冷たい目をしたシャープールがいた。 「これは、私のものだ。返せ」 「あなたのものなどでは、ありません」 「ほざけ」 シャープールが嘲り、それに苛立ったウィリアルスが、剣を抜こうとすると、突然ウィリアルスは後ろから拘束される。 「ホメリ連れていけ」 「御意」 そして、俺はウィリアルスが連れていかれた方向の逆、つまりは館へ戻されていく。 その間、シャープールは一言も言葉を発さなかった。 館の俺の部屋のベッド。そこに俺の体は投げ出された。柔らかいから、体に痛みは無いが、さっきから無言のシャープールを思うと、心が痛くなる。 「ヴァレリアヌス、覚悟は出来ているだろうな?」 その言葉に何も返せず、ただあいつを見つめる。すると奴は舌打ちをして、俺から視線をそらし、そしてキスをする。 優しさもあたたかさも無いキス。 ただ快感だけが俺を支配し始める。 「んっ...」 シャープールの指が、俺の乳首をそっとなぞった。弱いが確かに快感に変換される感覚で、それから逃げようと体を捩ってしまう。 するとシャープールは、それを許さないとでも言うように、体を押さえつけ、乳首を舌先で弄る。 その間に後ろの穴に伸ばされた指が、俺のナカを蹂躙する。 全く心の感じられないセックス。 それなのに、感じてしまう体が、とても嫌だった。 「やめてっ...やめっ!...はぁっっ!」 どれだけ泣いて懇願しても、あいつは許してくれない。 「そんなふうに、部下も誘っていたのか?」 耳元で囁かれた言葉に、心が冷やされた。 「もっ...やめてっ...おねがぃ...おねがっ...シャぁプール..っ」 怒張したあいつ自身を入れられてからは、そんな言葉しか紡げなくなった。 気持ちくて、奴に入れられていることが幸せであるはずなのに、それなのに、涙が止まらない。 それが生理的なものでないことは、とてもよく、わかっていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |