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Don't go back 9

情事が終わった後、シャープールは何も言わずに館を去った。

いつもみたいに体も清められることはなく、捨てられた、そんな感じだ。

仕方なく痛む体に鞭打って、湯あみ場に向かう。

湯あみ場では、繰り返し繰り返し、ナカに指を突っ込んで、奴が出したものを掻き出す。
こんな虚しい行為はしたくなかったけれど、前に、しなければ腹を下すと言われたことがあったから、義務のように指を動かした。

ぽたぽたと情けなく涙が落ちる。
そこで、俺はやっとどうしてこんなに悲しくて、心が痛いのかを悟った。
「俺は、あいつが好きなのか」


初めは敵の王で、絶対に許せない屈辱を与えやがった人間だったのに、それなのに、ほだされてしまったようだった。

でも、自覚したって、どうしようもなく今更だった。

さっきの奴の行為に愛なんて甘いものは、一切感じられなかった。

もう、愛想を尽かされている。
それなのに、国に逃げ帰ることさえできない。

その事実に俺は、死んでしまいたいと思った。


俺の逃走未遂から、約2ヶ月が経っていた。
あの日からシャープールは一度も来なかった。

館と王宮の間にある庭には、王宮で働く女たちがよく休みに訪れるから、今の状況は風の噂程度に知っている。

俺以外の捕虜たちは、ササン朝にとって、意外と重宝される存在になったらしい。
帝国の建築に代表される技術は、他国の追随を許していないから、捕虜たちは、ササン朝の発展のために働いているらしかった。
シャープールは捕虜たちに寛大で、今では奴に忠誠を誓っている捕虜も少ないという。

捕虜たちが殺されず、居場所を見つけている。それは俺の心を少しばかり軽くした。


でも、それでも、俺はシャープールのことを、少しも忘れることができない。
恋心を自覚した日から、日毎に奴への思いは強くなって積もっていく。

もう、あいつが俺のもとへやって来てくれることなんて、ありはしないのに。

俺は毎日奴がくれた本を読み続けた。少しでも奴の面影をこの館に残していたい。
その一心で。

こんなに誰かに焦がれることが苦しいなんて、俺は初めて知った。

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