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リヴェラポリス1(人気者×嫌われ)

リヴェラポリス
それは、全世界に無数にあるポリス(街)の中でも、有数の豊かさと平和を保っていた。

人々はみな穏やかで優しく、旅人にも人気のポリスである。

しかし、このポリスが栄えた理由は、とても変わったものだった。



「やだ、あの子また5だって」
「一桁なんて見たことないわ」
「よっぽど根性がネジ曲がっているのね」

このリヴェラポリスの人々は、人の心の美しさが見えた。

常に見えているのではなく、見ようという意思をもって目を凝らすと、その人の頭上に数字が見えるのだ。

100が最高で0が最低。
でも、だいたいみんな50前後で、それほどの差がつくこともない。

彼らはそれが見えるから、悪人に騙されることも、侵略されることもなく生きてきたのだ。



さて、先程陰口を叩かれていた少年、彼はギルと言うのだが、彼はとてつもない問題児である。
数字が一桁なのだ。
一桁なんて、よっぽど性格が悪くないとなり得ない。

だから、彼はポリスの人々のほとんどから嫌われていた。


「あんの、クソガキまたパンを盗っていきやがった!」

そんな声が街の小路で響く。
ギルは既にパンを抱えて、裏路地に隠れていた。

「おい!?アレ、ギルじゃねーの!?」

小路の方を警戒していたら、反対側から声がして、咄嗟に振り向く。
すると、普段ギルを苛めているグループのメンバーが3人いた。18にもなって苛めなんて馬鹿げてるとと思うが、彼らはつまはじきのギルを苛めるのが、正義だと信じて疑っていないようだった。

「おい、ギル、そのパン、アリンナおばさんのとこのじゃないのか?」

その通りだったが、言い返せずに、黙りこむ。

「また盗んだのかよ!コソドロ!!あばずれの子供は盗人だなぁ!」

ギルは、自分を捨てた親のことを言われて、頭に血が上った。
咄嗟に拳を振り上げ、それを下ろそうとする。


しかし、それは叶わなかった。


「...や、やぁ、ヴェルデ」

3人のうちのひとりが、ギルの腕をつかんでいた青年にあいさつをする。
ヴェルデという青年は、性別に構わず人を骨抜きにするような笑みを浮かべて、あいさつを返す。


「やぁ、3人とも。盗みをしてしまったギルを諭してくれていたんだね」

3人はヴェルデの言葉にこくこくと頷いた。

「ありがとう、ギルのことは俺に任せて。大丈夫だから」

ヴェルデの微笑みに逆らえず、3人は表通りに去ってしまった。



ヴェルデ・リドール
このリヴェラポリスの市長のひとり息子で、誰よりも高い数字を持つ男だ。

ポリス中から尊敬されていて、かつ優秀。非の打ち所のない青年である。

そして、ポリスの人々は、ギルを愛することも、彼の心の広さゆえだと理解していた。
ポリスの誰ひとりとして愛すことのないギルを、ヴェルデが愛していることは、周知の事実なのだ。


「さ、ギル、パンを返しにいこう」

ヴェルデの言葉に、ギルは睨みだけを返す。
ギルはヴェルデが大嫌いだった。

愛されたことのない者が、みなから愛された者を嫌うのは当然と言えば当然。

しかし、それ以上に

「はは、ギルいいの?こないだみたいにお仕置きしちゃうよ?」

ギルはヴェルデに飼われている。

衣食住を保証してもらうかわりに、ヴェルデと四六時中くっついていなければならなかった。
もちろん、性的なこともされた。

それに耐えられなくなり逃げ出して一ヶ月。
ついに捕まったのだ。


「ほんとは、三日で居場所を突き止めたんだけど、遊ばせてあげようと思って」


そういって、ギルを撫でるヴェルデの手を、ギルは嫌いなはずなのに、振り払うことができなかった。

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