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〜助手にさざ波を…〜 12

 再び、ヤコの声。

 声というよりも…喉から絞り出すが如くの、唸るような……



 2人は、そこにいた。

 手前に、ヤコが貪るのであろう、生ゴミの入った袋が、2つばかり。

 そのやや奥に……


 ヤコが壁に押し付けられている。


 匪口が……
 ヤコを壁に押さえつけ…
 ヤコの頬に触れている。


 ヤコを様々に思い惑わせ…
 ヤコが涙を落とすきっかけの言葉を吐いた…匪口…が…


 ヤコの唇に触れている…


 ……唇…で……




 目の当たりにし、先程までの焦りが静まってゆく。冷静な自身を、自覚する。

 不思議なことだ。



 ヤコは、愕きと、強引さによる単純な嫌悪感に苛まれたような表情。

 煽ったのはヤコなのだ。
 自業自得ではあろう。

 が…

 奪われたものがヤコの唇であるが故か…

 ……哀れにも思える……



 ふ、と一息吐き、

「…おやおや…」

 一歩踏み出し、呟く。


 匪口は体をあからさまにびくつかせ、ややして、ゆっくりヤコから離れ、こちらを見た。
 未練がましく、ヤコの肩に手を残している。


 …ヤコをここまで想う者がいるなど…





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あきゅろす。
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