main storyT 〜助手にさざ波を…〜 13 ヤコが知らず、他の男を惑わせていることを、承知していたとはいえ…… …いや… 我が輩の見出したモノの価値を、人間如きに見出せる筈がなかろうと、我が輩が勝手に思っていただけなのやもしれぬ。 「ネウロ……」 ヤコは我が輩を認め、ひとこと呟く。 曰わく言い難い風情に歪んだ表情だ。 そうして、肩に残された手ごと匪口を振り切り、我が輩の横をすり抜け逃げ出してしまう。 ……好都合だ…… 後ろ姿を見送り、我が輩は匪口に向き直る。 匪口は、振り切られた掌を眺めて呆然としている。 我が輩は今、笑っているであろうか…? 「とんだお邪魔をしてしまいましたか… 先生のいらっしゃるのが遅いのでお迎えに出てみれば… 匪口刑事には悪いことをしましたね」 匪口が怪訝な顔になる。 それで良い。 我が輩の気持ちなど、悟らせるものか。 貴様などに…… 訝しむ匪口を見下ろし、 「先生は、度が過ぎてうぶなお方でいらっしゃいますから… しかし、逃げてしまわれるなんて、匪口刑事に失礼なことですよね…」 我が輩は言う。 あくまでも、助手として… . [*前P][次P#] |