main storyT 〜助手にさざ波を…〜 11 『わかっちまったんだろ?』 余計なことは言わない匪口。 …匪口もなかなかヤコのことを解っているではないか。 『だっ…て…だってそれは…』 たどたどしいヤコの言葉。 思い知らされたものは…ヤコには重かろう。 思いよりもしなかった、目の前の男の想いも。 気付けなかったが故の、己の残酷な言動も。 …気付かされた己の想いも… 駆け降りていかねばならぬ階段はひどくもどかしく、視える光景は我が輩の焦りを煽りたてるのみ。 我が輩は虫との連携を切る…… …ヤコの『声』も…聴こえない… ビルの外に2人の姿はなかった。 ほんの直前までいたものを…一瞬訝しく思うが、ヤコの気配は濃厚で近い。 辺りを見回すと、自然と、隣接するビルとの間の路地に目がいき動かなくなる。 ……そこか…… 同時にヤコの声を聞く。 「!……ひぐ…」 何が起こっているのか、考えたくもない。 普段は意識せずとも気配を消している靴音を、我が輩は意識して高らかに響かせつつ、路地へ。 ……間に合わなかったのは、わかっていたのだ…とうに…… . [*前P][次P#] |