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孤児院ストレンジ
まさかのポニテ子さん視点。
10年近く前のおはなしのつもりです。

***


積み木。
種々の形をした木片を積んでいろいろな物の形を作る遊び。
また、それに使う木片の玩具。

この遊びは奥が深い。
成程沢山の子供が熱狂するのか。

私はそんなことを考えながら、つぼみちゃんの遊びを見ていた。

「つぼみちゃん?」

濃い緑色の髪が揺れる。

黙ってこっちを向き、「?」という表情をした。顔色を伺っているようだ。

この年で顔色を伺う子供なんていない。よほどひどい環境で育ってきたのだろう。

「そろそろ終わりにしてー…新しいお友達のところに行かない?」

つぼみちゃんの顔が青ざめる。
私の脳裏に、あの気のよい二人組の顔が思い浮かんだ。

「大丈夫だよ…いい子だし、友達になれる」

つぼみちゃんはブンブンと首を左右に振った。本当に不安らしい。

私の連れていきたいという感情を察したのだろう。何だかとても申し訳なさそうな顔をして言った。

「ごめんなさい…」

小さな手をぎゅっと握りしめ、下を向いた。昔の環境なら、殴られていたのだろう。

こういうタイプの子は、たとえ自分が悪くなくてもすぐに謝ってしまう。いいことじゃあない。

「だーいじょーうぶ。二人共優しいから」

いまの言葉に反応した。表情が明るくなる。
「………」
「え?」
「…みる」

「…行って、みる…」

とんでもなく小声で、理解するのに時間がかかった。
だが、決心したことは伝わる。

「…もし駄目だったら、私に相談してね?」

心からそう言った。

つぼみちゃん、木戸つぼみ。

1月2日生まれ、5歳。
両親の他界。という建前でここに来た。

身を隠すための能力…ねえ……
能力を手に入れる背景には必ず、その能力を使わなければ生きていけないような環境がある。

実際は、父親は借金に追われ逃亡。母親はそんな夫に代わって仕事をし、蒸発してしまった。

つぼみちゃん…娘は両親のことを噂され、保育園にも行けなくなってしまう。

全く、どんな状況で生きてきたんだか。
この頃はそういう子が多い……

「着いたよ。頑張ってね」

つぼみちゃんは物凄く緊張していて、何だか申し訳なく思った。

夏だというのに、さっきあげたばかりの紫色のパーカー(私のお古だ)を着込んでいる。まあ、私よりは似合っているけれど。

ドアを開けた。

「あ、先生!今日もセトがねー…」
「カノ!言わないって約束したじゃん!」

可愛いなあ…もう。

小声で言う。
「落ち着いてね?」

つぼみちゃんはコクンと頷いた。


「木戸つぼみ…です」




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