深い闇の底で見つけた光
10
それに気づいて、薫は千鶴に微笑みかけた。
…薫はどんな思いで、千鶴ちゃんを見ているんだろう…。
「………」
「きっと、この子が女装したら、そっくりだと思うなあ」
「あ、あの…」
話しかけた千鶴に気づかないふりをして、薫は沖田に話しかけた。
「もっときちんとお礼をしたいのですけど、今は所用がありまして。……ご無礼ご容赦下さいね」
薫は私に一度目を向けると、歩き出す。私もそれに続くように歩き出した。
そして、一度だけ振り返ると、沖田に向かって言った。
「このご恩はまたいずれ。……新選組の沖田総司さん」
そのまま薫はまた歩き出してしまった。
私はぺこりと軽く頭を下げて、薫を追いかけた。
「…見事に忘れてたね」
「千鶴ちゃんのこと?」
そっくりだったね、薫に笑いかけると、薫は不機嫌そうな顔で私を睨む。
「気づかなかったのか?あいつは俺の妹だよ」
ガッと手首を捕まれて、路地裏に連れていかれる。
「か、薫…?」
「俺、今ものすごくイライラしてるんだ…」
…う…。ヤバい…!
「や…八つ当たりとか、したい…気分…ですか…?」
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