深い闇の底で見つけた光 06 そっと目を開けると、鏡を渡される。 恐る恐る覗き込むと、私は目を見開いた。 「…だ、れ?」 「おまえに決まってるだろうに」 …私? 「…嘘だ」 信じられない…。じっと鏡を見入っていると、不意に後ろから手が伸びてきて私の頬をつねる。 「いひゃいっ―」(痛い) 「鏡に映ってるそのマヌケ顔、おまえだろ?」 「わかっひゃかりゃ、はにゃひてー!」(わかったから離して) そう言うと薫の手が離れた。強くつねられたのか、そこが赤くなっている。 「うー、痛い…」 そんな私を見て、薫はくつくつと笑う。 「すぐ治るだろ?…俺も着替えなきゃな」 「わ、私、廊下出てるっ」 慌てて立ち上がると、襖に手をかける。 「待て」 振り返ると、薫がどこか険しい顔をしながら私を睨む。 私はそれを見て軽く微笑んだ。 「…何処にも行かないよ。だって、私が頼れるのは薫だけだもん」 着替えたら呼んで、ただそれだけ言うと私は廊下に出た。 [*前へ][次へ#] |