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< トリックスター >






「――――またもお騒がせだな、悪ガキ」



――――ワイルドな顎鬚を携えて30代後半の男はその渋さを垂れ流す。

階段に腰かけて空を見上げていた神崎卓は、その背にかかった声に紫煙を吐きだして笑った。



「―――なぁ、悪徳教師。あんたこそ、しっかりマーキング?」


どこにでもいる平凡に囚われる男は相変わらずモラルを捨てた教師失格の男だ。



―――平凡の首についていたいつかのキスマークを思い出して卓はニヤリと笑っていた。


意趣返しに舌打ちした教師は階段を下りて卓を追い抜くと中階段の踊り場の塀に肘をつく。





「―――ったく、こりねぇ奴だよ、オマエは。おとなしく狼に捕まっておけばいいのによ」


―――以心伝心の類友はさすがに聡い。

卓は煙草を挟んだ指をすっと上げて、食えない笑みで皮肉げに言葉を使い回す。





「――――何、"狼"の威を借る狐って?」

背後を向けた男はただ背中で笑って「そんなタマかよ」と空に言葉を綴った。





「――――なぁ、お騒がせなトリックスター」






――――世の中のルールを笑って破る。


悪戯好きなトリックスター。


ねぇ、周囲をひっかき回す君は―――。





「――――物語をどこに連れて行く気だ」

渋い声で聞かれたその問いかけに卓はただ「さてね」と紫煙を高く吐き出すだけだ。




白いその煙は青空へと直進しやがってゆるりと拡散する。




――――その儚い様を神崎卓の視線が静かに追っていた。








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トリックスター:
ペテン師、詐欺師
悪戯なキャラクター



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