貧乏なんです。 ボロいアパート。 その2階に僕の家があるんだ。鍵を開けて中に入り、もらったお弁当のうち2つを小さな冷蔵庫に入れる。 1Kのトイレバス付き。 それでいて家賃は1万5千円。綺麗というわけじゃないけど、僕には凄く助かってる。 家賃だって、ほんの少しまけてもらって……僕は恵まれてるのか不幸なのか、時々分からなくなるんだ。 「いただきます」 しっかり手を合わせて、命の恵みに感謝しながら食べる。 机なんてものはない。 飲み物だってあまり美味しいとはいえない水道水だ。 それでもこうして食にありつけるのは、僕にとって幸せなことである。 ……本来なら、僕は高校一年生だ。だけど僕は行っていない。 本当は就職したかったけど、このご時世で中卒は雇ってくれなくて、だからバイトの掛け持ちで何とかやりくりしている。 親? ……そうだね、そこらへんはあとで詳しく話すよ。コンビニから次のバイトまで2時間、その間に洗濯をしなきゃいけないし、忙しいんだ。 ほら、洗濯機なんてないから、手洗いだし。 「んーっ、梅干しうめーっ」 夏は梅が美味しい! 最後に種をプッと出し、ごちそうさま、だ。 それから手洗濯、掃くだけの掃除をして家を出る。 次はスーパーのバイト。 こっちはレジじゃなくて、魚を切ったりお惣菜を作ったりする、調理の方。 おかげで料理は家でしないけど、結構腕はあがったと思うんだよなぁ…。 『香澄君、今日はちゃんと食べてきたの?』 「あ、はい!お弁当をもらったんで、ちゃんと食べてきましたっ」 『そう、なら良かったわ。困ったときはいってちょうだいね?』 『そーそー。"オネーサン" たち、頼っていいのよ』 「ありがとうございます。その気遣いだけで僕、元気が出ます」 パートのおばちゃんたちも、みんな優しくて泣けてくる。 笑顔を返してお金のためと、心配してくれるみんなのために必死に働いた。 ここでも、運がいいと色々もらえたりするんだけどね。 もらえるもんはもらう。 じゃないと痛い目見るし。 [*前へ][次へ#] [戻る] |