そして学校へ。 「……いやいや、お金ないっ!」 「それくらいこっちが出す。うちの親父の学園だしな」 「借金勝手に増やすなよ!」 「全部で9300万だ。ククッ、ほんとに一生尽くすことになるかもなぁ?」 いっせんまんもふえた…! 何を勝手な、と睨みつけてみたけれど、ニヤニヤとするだけでやっぱりこっちの話は聞いてくれない。 でも、ホントいうと…学校に通えることに心がグラッと揺れた。 行きたくなかったわけじゃない。そうしなきゃいけなかっただけで、登下校の生徒を見るたびに羨ましかったから。 だけど! この男に借金増やしてまで通うのが嫌なんだよっ。 「おい…」 「うるさい。…少し、整理させてくれ…」 「どうでもいいが、車の中でしろ。もう行くぞ」 「……クソやろうが」 「そのクソはお前の "主人" だ。口の聞き方に気をつけろ」 クツクツと楽しそうに笑う男に、本気で泣きたくなった。 いや、車の中で泣いた。 混乱しすぎると訳分かんなくなって泣けるもんなんだよ。 あの男が何かいいたそうにこっちを見てたけど、学園につくまでの3時間近く、僕は一言も喋ることはなかった…。 ▼北斗side 理不尽な利息のせいで、一年も頑張ったアイツの借金は全くといっていいほど返済されてないらしい。 相手方の話を聞きながら、これだから貧乏人は…と思ったが、"売る" だの "ショーに出す" だの聞こえてきて、ガマンが出来なくなったんだ。 手切れ金も含め、本当は9000万、相手に渡してやった。 これでアイツは…香澄は、俺のモノ。 ムリヤリかもしれないが、そばにいるならいつか落とせるだろうから構わねぇ。 利子はねぇ借金、 今まで以上に裕福な生活、 学校に通える。 これ以上幸せな返済生活はねぇだろ。 「っ……はぁ…」 「………」 車の中で、アイツは泣いていた。ムリヤリすぎたが、いつかは俺に感謝する日がくるだろう。 だが、まぁ、なんだ。 悩めそうに溜め息をつくのも、…結構いいじゃないか。 平凡なくせして、たまに不意を突いてきやがる。 覚悟しとけ香澄。 誰にもなびかなかったこの俺を、落としたんだから。ぜってぇ手に入れてやる。 * * * [*前へ][次へ#] [戻る] |