本音。
あの男の名前は、天沢北斗というらしい。なんか黒に近いグレーの髪は右が長く、ノンフレのメガネがイヤミったらしい。
背は高い。
悔しいが、イケメンだ。
どこかエロい感じのする男。
(セクシーといえ、セクシーと)
ずいぶん大人っぽいと思って見ていたが、なんと高3らしい。
世も末だ。
この男が理事長の息子で、おまけに生徒会長とか、やっぱりこの学園は終わってる。
「テメェ…今失礼なこと考えただろ」
「ないない。それより…まだつかないの?」
「もう敷地には入ってる。矢野、あとどれくらいだ」
「そうですね、10分もかからないと思います」
「…だそうだ」
運転をしてくれている、この前僕を誘ってきた人は矢野さんというらしい。
20代後半ぐらいで、北斗の世話役だってさ。
あ、呼び方とか敬語とか、畏まったりしないから。
北斗も嫌だっていったし、僕だってこの男を尊敬なんて出来ない。
もう色々諦めた。
返すペースは遅くなるけどちゃんと返せばいいわけだし、…学校に通えるし。
疲れちゃったんだよね、色々と。借金のことも、バイト先でいい子演じてるのも。
元々の僕はこんな感じ。
友達とちょーっとイジワルなこといったり、大人をからかったりするのが好きだった。
でもバイトするようになって、いい子してる方が受けが良かったから…何となく、さ。
「……恨んでんのか」
「………」
「はぁ…まぁいい、ついたぞ」
「……恨んでは、ないよ。利子がなくなったのと学校に通えるのは、一応感謝してる」
車から降りようとする北斗に小さな声で本音をいえば、なぜか腰をあげた状態で固まった。
それが不気味で、僕はさっさと車から降り、矢野さんに近づいて安全を確保する。
「……北斗様、行きますよ?」
「あっ……ああ、理事長室へいく。矢野は荷物を運んでから来い」
「はい、分かりました」
(……礼を、いわれるとは…)
一つ分かったこと。
矢野さんはどこまでも北斗に忠実に仕えてるということ。
あのときも、何だかんだでガッシリ押さえてたしな、僕のこと…。
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