後に残る思いと、 拘束されていた腕が解放され、僕は体を抱き寄せて泣いた。 男によって露出した上半身は夏なのに肌寒く、体はドンドン冷えていく。 僕は男たちの顔すら見ることが出来ず、体を必死に抱き締めていたんだ。 「宮迫香澄。…お前は、もう俺からは逃げれない。逃がさねぇ」 ──ビクッ 「覚えておけ。お前は…俺のモノだ」 「っ、ふ…もう、嫌だ…!」 どうして、どうして僕なんだ! 凄く怖かった…何もされなかったのが奇跡かもしれない。 誰もいなくなったその部屋で、僕はしばらく泣き続けた…。 ▼北斗side 「っ……クソッ!」 イライラする。 アイツのあの怯えた目が俺に向けられていたかと思うと、すっげぇムカつく。 ただからかって、あの顔を見てみたかっただけだったっつーのに…。 ……マジ、経験ねぇのか。 「気を静めて下さい」 「……アイツ、借金があるっていってたな」 「ええ、ご両親のを押し付けられたみたいですよ」 「ふーん…」 もうアイツが男だとかどうでもいい。あの顔を見たいし、他の奴に見せたくねぇ。 アイツの肌に触れたとき、体が熱くなった。泣かせてみたいが、あんな泣き方はアイツにはしてほしくねぇ。 ……それで、いいじゃねぇか。 逃がすつもりは毛頭ねぇ。 だが…逃げれなくなったのは、俺の方かもな…。 「おい矢野、明日朝一で銀行にいくぞ」 「銀行、ですか?分かりました」 「……待ってろ、香澄…」 お前は一生、俺といなきゃいけなくなる。身の安全は保障してやるんだ、それくらい…いいだろう? * * * 「お疲れ様でしたーっ」 『また明日ー』 ふっふっふ、なんと! 今日はお弁当2つにパンを2つももらってしまった。 ヤなことがあると、次にはいいこともあるもんだ。 ちょっと奮発して80円のパックジュースも買って、朝ご飯を食べる。 今日はスーパーのバイトが休みだから勉強だな。 [*前へ][次へ#] [戻る] |