・20 「突然話し掛けた俺も悪かったし。あ、俺、長島嵐。よろしく」 「あ、長谷川真紀です。よろしく……」 「あーそんな気ぃ遣わなくていいよ。俺ら同級生なんだし。あ、ねぇねぇ、メアド教えてくれない?」 笑顔だけど少し強引な嵐に、真紀は戸惑う。 新しいクラスの友達第一号なのだから喜ぶべきなのだが、どうにもノリについていけない。 「ダメ?」 「あ、えと……」 とりあえずメアドくらいならいいか、と鞄に手を入れたところで、また別の声がかけられた。 「嵐、あんま困らせんな」 低く、でも落ち着いた声に顔を上げると、そこには背の高い男子生徒が立っていた。 切れ長の目が冷たい印象を持たせるが、その言葉は優しかった。 「えー別に困ってないよなぁ、真紀ちゃん?」 「え、えっと、あの……」 「ほら見ろ、困ってる」 なんと言うべきか迷っていると、前にいた男子が助け船を出してくれた。 「ちぇ〜。じゃ、また今度教えてね」 嵐はそう言うと席を立ってどこかに行ってしまった。 [*back][next#] |