・19【思い出】
夕陽が眩しい。
そう思い、目を細めた。
あの、春の日。
新しいクラス、新しい同級生、新しい教科書。
半分は見たことのある生徒だけれど、どうにも居心地が悪い。
出席番号が後ろの方の長谷川真紀は、教室の隅っこの方で、今日からはじまる新しい生活に、少し怯んでいた。
よりによって、今回のクラス替えで仲のよかった友達とクラスが分かれてしまった。じゃあ新しい友達を作ればいいのだが、引っ込み思案な性格のため、なかなか動きだせない。
ちらりと教室を見回すと、すでにいくつかのグループができていた。完璧に出遅れだ。
「はぁ……」
思わずため息が出てしまう。今度は視線を窓の外に移す。友達がいる南校舎が少し明るく見えた。
「何暗い顔してんの?」
「ひゃっ」
不意に声をかけられ、つい声を上げてしまう。振り向くと、隣の席に座っている男子が苦笑を浮かべていた。
「うっわ、なんか傷つくなーその反応」
「ご、ごめんなさい……」
咄嗟に頭を下げると、「いいって」と笑顔を向けられた。
春なのに向日葵を見てるのかと錯覚するような笑顔だった。
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