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「……え、お休み、ですか」


 次の出勤日、シフトのはじまる時間になっても雅之くんが来ないことを店長に言ったら、そう言われた。


「うん。受験も本腰入れなきゃいけないし、しばらく休むって」


 そういえばもう季節は秋だ。いくら雅之くんでも、バイトをしている時間が惜しくなったのかもしれない。


「……そうですか」


 前回の気まずい空気が嫌で、今日会ったら素直に謝ろうと思っていたのに、相手は不在。それどころかしばらく会えそうにもない。


「……雅之くんてどこの大学志望なんですかね?」


 仕事をしながら何気なく聞いてみると、店長は少し考えた後首を傾げた。


「さぁ。そういう話はあんまりしないからね、自分から」


 確かに。

 控え室で勉強していたときも、受験に関してはあまり話をしなかった。


「まあ、坂本くんが狙うようなとこだから、レベル高いとこだろうな。県外とか」


 “県外”

 そうか、そういうこともありえるのか。

 だとしたら、もう……。

 ふと、私の思考がそこまで及ぶ前に、店長が続けた。



「もしかしたら、このまま辞めるかもとも言ってたしなぁ」



 雅之くんが、辞めてしまう……?

 そうだ、そういうことだってありえる。

 やっぱり私はバカだ。今の状態がずっと続くと、漠然と思っていた。

 雅之くんがいなくなるなんて、考えたこともなかった。

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