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「智実さん……?」
小さく名前を呼ばれる。
でもごめん。これ以上は、きっと私“大人”でいられない。
「……そろそろシフト始まるよね。準備しなきゃ」
「そう、ですね」
いそいそと片付けて制服にエプロンをつける。雅之くんの片付けが終わる頃には、私は控え室を出た。
嫌な人間。なんでこんなにムキになっているんだろう。
頭の片隅では分かってる。これはきっと嫉妬だ。
年上なのに何もできない自分が、年下なのに何でもできる雅之くんに嫉妬している。
バイトのことだけならまだしも、こんなところで差を見せつけられたみたいで悔しかったんだ。
(……大人気ないことに変わりはないか)
小さく、重いため息。淀む先は、目に見えない。見えないからこそ感じる。この劣等感は、今にはじまったことじゃない。つい口に出てしまうほど、知らない内に溜まっていた。
──私って、嫌な人間……。
その日のバイトでは、いつものような雑談は一度もなかった。
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