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「だってやっぱりオールマイティーにできた方がいいじゃん。雅之くんみたく」

「…………」


 数学だって古典だってバイトだって、結局できてしまう雅之くんが羨ましい。

 私は文系のくせに英単語の一つひとつに悩まされ、コンビニのレジ打ちさえたまに間違える。

 こんなんで、いいわけない。


「智実さんは智実さんのままでいいと思いますよ」


 そんな私の心を見透かしたように、雅之くんが笑顔を向ける。

 年下に励まされる私。やっぱり、そうだ、あれだよ、


 ──“情けない”。


「いいよ、そんな気遣わなくて」


 出た言葉は、思いの外強かったかもしれない。

 でも出ちゃった。その言葉が耳から入り、また次の言葉を生み出す。

 目を丸くしてる、雅之くんに向けて。


「ほんとのことだし。二十歳にもなって、情けないよね、こんなで。分かってるから、別に無理して励まさなくていいよ」


 遠慮なんかじゃなくて、謙遜なんかじゃなくて。むしろこれは拒絶。

 雅之くんの優しい言葉が、今はただちくちく刺さる。

 私って情けない。分かってるはずなのに、自覚させられるのが嫌だった。

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