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「でも、少しは先輩の気持ちも考えてあげたら?」


 そう言って綾は自分の席に戻っていった。いつの間にかチャイムが鳴っていたらしく、ほどなくして教師が入ってきた。午後の授業が始まる。

 だが、歩香の頭の中にはさきほどの綾の言葉が回っていてどうにも授業に集中できなかった。

 気持ちを考えろ? あんな自分勝手な奴の何を考えればいいのか、歩香にはとんと見当がつかなかった。





「雨か……」


 昼過ぎまでは晴れていたのに、今はしとしとと泣く空を見上げて呟いた。

 帰宅部の歩香は、授業が終わって今帰るところだった。だが、昇降口まで来たところで立ち往生していた。


「折り畳み……ないか」


 普段から鞄に折り畳みを入れている歩香だったが、そういえば新しいのを買わなければいけないのを忘れていた。


「しょうがない」


 鞄を頭にかざすと、歩香は雨の中に駆け出した。

 バス停まで行けば屋根があるし、このくらいの雨なら少し歩いても平気だと判断した。

 冷たい雨の雫が、頬に当たった。

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あきゅろす。
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