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昼休みが終わる直前に教室に戻ると、すでに雪都の姿はなかった。
ほっとして席に座ると、綾が近寄ってくる。
「おかえり、歩香。どこ行ってたの?」
「ただいま。別に?」
特にどこともない場所をうろついて帰ってきただけの歩香は、適当に答えた。
その答えに気分を害するでもなく、綾は笑顔で続ける。
「歩香はさぁ、なんで平井先輩のことそんなに拒絶すんの?」
「……なんで?」
綾の問いにむしろ疑問を持った歩香は不機嫌そうに問い返した。
「先輩あんなだけど結構人気あるんだよ? 案外優しいし。付き合っちゃえば?」
「冗談」
口元を引きつらせて歩香は言い放った。
「あんな、人の気持ち分からない人間なんて、まっぴらごめん」
「人の気持ち?」
「毎日毎日しつこくつきまとわれて、こっちが迷惑してんのに気付かないなんて、分かってない証拠じゃん」
言いながら苛々してきた。綾に当たっても仕方ないのに、言葉が止まらない。
「でもそれだけ歩香のことが好きってことじゃない?」
「好きなら何してもいいわけ?」
「ん〜……」
歩香の徹底拒否に綾も渋面する。ここまで頑なでは、話が次に進まない。もっとも、歩香自身は進めたくなくて拒否し続けているのだが。
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