[携帯モード] [URL送信]



「あれ? アユカちゃん?」


 嫌な状況は重なるものらしい。

 不意に聞こえた声に、歩香は顔をしかめた。歩くスピードを速める。


「ちょっと待ってよ」

「待たない」


 案の定追い掛けてきた雪都を振り払うように走るが、雪都は難なくついてくる。

 なんとか巻こうと必死になっていると、少し遠くに来てしまった。一番近くのバス停まで歩こうと思っていたのに。


「アユカちゃん足速いねぇー」

「…………」


 あぁもう面倒くさい。

 歩香は立ち止まって雪都を振り返った。


「いい加減にしてくれませんか。迷惑なんですけど」


 思いっきり睨みつけて言ってやる。これだけ本気を見せ付ければ、雪都だって諦めると思った。

 だが、


「雨、濡れちゃうよ」


 歩香の言葉を聞いていなかったのか、雪都は笑顔で、自分の差していた傘の中に歩香を入れた。

 一人でムキになっているのが恥ずかしくて、更にムキになる。女にだって意地がある。


「だから、そういうのもやめてってば!」


 叫びながら雪都を振り払うように腕を振ると、傘に手が当たった。空のように青い傘が、雪都の手から離れて宙を舞った。

[*back][next#]

6/30ページ


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!